＜地元名菓としての再ブランディング＞
　2009年に社長に就任し、まずは社内の基盤づくりに注力した。部署の垣根を超えたテーマ対応のプロジェクトチームを設置し、意見をぶつけ合う場を設けた。そこで、自社製品について話し合った結果、全国区の知名度と裏腹に「地元名菓」としての課題が浮き彫りになってきた。それは、地域色や顧客との接点の少なさだった。

　そこで、地域色を高めるために「フロム博多戦略」を掲げ、『季（とき）ひよ子』シリーズを展開。『桜ひよ子』や『茶ひよ子』『栗ひよ子』を発売し、福岡空港や博多駅で好調な販売を続けている。顧客との接点については、実演販売を行ない、できたての『名菓ひよ子』を味わってもらうことで、改めてその美味しさに触れてもらおうといったキッカケづくりを展開している。
　その愛らしいかたちが売り物の『名菓ひよ子』を試食の際に切り分けることは、同社の歴史上許されなかった。そこで、伝統を守るために、小さな木型でつくったミニひよ子の実演を行なっている。これにより、顧客との対話だけでなく、子どもに夢を与える『名菓ひよ子』本来の持ち味をPRすることに成功している。

＜社員と想いを共有する＞
　会社として成長するために必要なこととして、「社長と社員が想いを共有する」ことが挙げられる。営業本部長も兼任し、強いリーダーシップを持つ石坂社長だが、従業員との意思統一ができなければ良い商品は生まれない。期首の社長による「方針発表会」で意思疎通を図っているが、それだけではない。日々の活動のなかでそれぞれの立場で迷うことがあった場合は、同社のブランドメッセージ「本物の美味しさであなたの笑顔に出会いたい」と、５つのエッセンスを指針にするという。それは、「『ひよ子』のかたち、『ひよ子』誕生の想いの継承・発展」、「本物素材へのこだわり」、「絆の拡がり、贈り物文化の伝承」、「子どもたちの健やかな成長のために」、「環境・自然への配慮の実践」である。

　『名菓ひよ子』の伝統を守りながらも新しい価値の提供を続ける同社だが、100周年事業として、12年７月に福岡市中央区天神に「Frau Atsuko Kayashina（フラウアツコ　カヤシナ）」をオープン。洋菓子中心のラインナップで、バームクーヘンが主力商品。２階にはカフェを併設したモダンな外観の店舗だ。ここでは、『名菓ひよ子』とは別の価値を提供していきたいというが、『名菓ひよ子』の伝統は守られている。「生きるを養うお菓子＝菓養（かやしな）」、美味しさを追求するなかにも、体に安全な原材料を厳選するといったコンセプトは、まさに『名菓ひよ子』の伝統である。

＜100年の伝統を守り新しい価値を創造する＞
　福岡は全国的に見ても、お菓子メーカーの多い土地だ。裏を返せばお菓子の激戦区とも言えるが、石坂社長は「競い合うことで切磋琢磨し、『福岡はお菓子が美味しい』と思ってもらえるようになると嬉しい」と言う。
　『名菓ひよ子』が誕生して100周年を迎えるが、これまでひよ子が愛されてきたのは、顧客からの信頼であり、それは、原材料や製造技術によるお菓子そのものの良さが支持されてきたから得られてきたのだろう。

　「100年の愛を時き芽き（ときめき）に」。これからの100年、伝統を守りながらトキメキのあるお菓子や企業活動を芽吹かせたいといった、同社の願いの込もった言葉だ。これまで、多くの人に愛され続けてきた『名菓ひよ子』の伝統を踏まえて、新しい価値を提供し続ける同社の新しい100年に期待が寄せられる。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■（株）ひよ子
代　表：石坂　淳子
所在地：福岡市南区向野1-16-13
設　立：1959年８月
資本金：9,239万円
ＴＥＬ：092-561-7111
ＵＲＬ：http://www.hiyoko.co.jp

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