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【傑物シリーズ】「怪物」ソフトバンク孫正義社長、全米一の周波数を手に入れる野望(後)
コダマの核心
2013年1月 3日 07:00

<潤沢な周波数を手に入れる>
 米国の携帯電話の契約数は3.5億と日本の2.5倍あるが、勝ち組はベライゾン・ワイヤレスとAT&Tモビリティの2強。スプリントは業界3位とはいえ、5期連続赤字の負け組。2強の契約数は1億以上で、これはスプリントの2倍近い。
周波数を増やすために、携帯電話会社の買収が行なわれる。しかし、米国の電波行政は寡占を厳しく禁じられているので、ベライゾンやAT&Tによる買収は却下された。

 米国の規制当局は、上位2強による寡占化が進行することに懸念が強い。ソフトバンクの買収計画発表を受けて「第3の通信事業者」としてのスプリントに対する期待が高まっているといわれている。3社間の競争を促し、市場の寡占化を防ぐのが狙いだ。
 孫社長は、この機会を見逃さなかった。クリアワイヤを傘下に組み込むことで、全米一の周波数帯を手に入れる挙に出たのだ。

 通信業界専門の複数の資料をめくったが、専門用語の説明だけでページが取られそうなので、要点だけを整理してみる。それによると、次の点がわかる。
 日本のプラチナバンドに近い帯域はベライゾンとAT&Tの保有量が多く、スプリントンとクリアワイヤはそれほど多くない。しかし、クリアワイヤは非常に広い帯域をもっている。この帯域は、音声通信ではなく、データ通信に特化した無線免許だ。

 スプリントがクリアワイヤを買収したことで、大量の周波数を持つことになった。ソフトバンクは大手2強と十分に戦えそうだと思わせるだけの豊富な周波数を手にできるのである。プラチナバンドのように帯域の質の優劣な差はあるにしても、ソフトバンクがこれだけの量を確保できる意味は大きい。
 だから、AT&Tは見過ごせない。即座に「日本の大手携帯通信事業者が米国の競合他社のいずれよりもはるかに多くの周波数帯をコントロールできることになるのは問題あり」と異議を申し立てた。

<重複周波数の売却か>
son-masayoshi.jpg 孫社長は首尾よく、全米一の周波数をゲットできるだろうか。
 米国の通信会社の買収には国家安全保障上の懸念の有無を審査する外国投資委員会と連邦通信委員会の認可手続きが必要。米国メディアは、ソフトバンクと中国の通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)との関係が問題視される可能性が高いと報じた。米下院が、華為の通信機器が国防や企業のネットワークでスパイ行為を行う脅威があるとの報告書を公表したためだ。

 華為は今年上半期の売上高で世界最大手、スウェーデンのエリクソンを抜き世界トップに躍り出た。ソフトバンクグループと、完全子会社化したイー・アクセスは華為の通信機器を基地局設備に導入している。問題になったとしても、華為の通信機器を米国内で使わない条件で認可されるだろうとの見方が有力だ。

 それではソフトバンクが大量の周波数を確保することは、買収審査にどんな影響を与えるか。AT&T目的は、スプリントとクリアワイヤの免許が重複する部分の周波数売却にあるとみられている。通信業者のM&Aの場合、周波数を独占する地域では、重複周波数の売却を義務づけているからだ。重複周波数を売却すれば、買収認可は下りる。
2013年夏には、ソフトバンクはスプリントを買収。孫正義社長は、全米一の周波数を手に入れるのである。

(了)

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