12月10日、昨年4月に提起された博多織工業組合(福岡市博多区、寺嶋貞夫理事長)を原告、日本和装ホールディングス(株)(東京都千代田区、吉田重久社長)を被告とする、「博多帯」による「博多織」の商標権侵害などをめぐる裁判は、日本和装HDの勝訴という結果となった。ともに「博多」への熱き想い、「博多織」の伝統文化を失いたくないという気持ちを抱いているがゆえに、衝突してしまった。今回の裁判結果について、再び両者の胸中を語っていただいた。
――提訴されてから約1年半経過しましたが、その間はどのようなお気持ちでしたか。
吉田 我々は粛々とやってきただけです。当社から答弁書を出し、経過報告も聞いていました。最終的には当社の全面的な勝訴となりましたが、やはり気持ち良いものではありません。そもそも訴訟ということ自体、当社にとって初めての経験でしたから。ちょうど東証二部に上場する年でもありましたし、足かせになる部分もあって非常に残念でした。
ただ、今回はすごく画期的な判決とも聞いています。ある人は「商標権についてここまで明確に結論が出されたケースはない」とおっしゃっていました。
――何か判決の決め手というのはあったのでしょうか。
吉田 いえ、こちらの主張が認められただけだと思います。当社は、福岡の工場を稼動させていること自体が、「博多織」の伝統文化を守っているということしか頭にありません。「博多帯」の生産で、何か金銭的なメリットが当社にあるというわけではありません。借入利息なども、地元金融機関さんの協力で年利1%くらいに抑えられていますが、それでも年間100万円くらいは発生します。
博多織工業組合の方と直接話せるときがありませんので、詳しいことはわかりませんが、組合に入っていなければ「伝統工芸士」が名乗れないそうです。今まで仕込んだ商品がありますので、そうなったからといってすぐに事業が終わるわけではありませんが。
――それは何か法的な拘束力があるのでしょうか。
吉田 私も詳しくは知りません。ただ、工場で働いている人たちがかわいそうですよね。肩書きがないと生産できないというわけではありませんが、やはり職人さんのやる気が損なわれると思います。ですから、組合側から保護政策さえ出していただければ、いくらでも協力するつもりです。とにかく「組合には入れない」の一点張りですから。
具体的な利害根拠があればわかるのですが。組合は独占禁止法の適用除外の恩恵を受けているそうです。これが資本主義経済にとって本当にプラスなのでしょうか。我々の参入が本当に毒になるのかも定かではありません。とにかく、その独禁法適用除外の下にいないと組合員が不利益をこうむるという考えなのでしょうが、ではそもそも独禁法とは何のための法律なのか。これではまさしく価格調整ではないかと思います。
いずれにしろ、博多織業界は変わっていく必要があると思います。我々は、組合にさえ入れていただければ、「博多織」として精進するという考え方です。「博多帯」という呼称には何の未練もありませんし、むしろ「博多織」に統一し、職人みんなが集まって新しい商品を開発し世の中に打って出たいのです。
| (後) ≫
▼関連記事リンク
・「博多織」裁判、渦中の人に聞く~日本和装HD・吉田重久社長の主張
・「博多織」裁判、渦中の人に聞く~博多織工業組合・寺嶋貞夫理事長の主張
※記事へのご意見はこちら