日本経済は冷え込んでいる。東日本大震災以降、貿易赤字が定着しつつあり、もはや貿易立国とも言えない状況。少子高齢化がさらに進む今後、日本経済が再浮上するための課題は山積み。日本のビジネスマン、企業はどういう観点で、経済を見ていけばいいのか。日本経済停滞の要因となった「円高・デフレ」からの脱却はなるのか。
第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストに聞いた。
<円高・デフレ脱却なるか>
16日に行われた衆議院選挙では、自民党の圧勝で、金融緩和政策によるデフレ脱却への期待感が高まっている。
第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、「民主党から自民党の政治になって、プロビジネス(親ビジネス)への転換が期待できるのではないか。安倍首相の金融政策は、おおむね評価できると思います。実務を行なう日銀総裁、副総裁の人事もカギを握る」と、語る。安倍政権下でこれまでよりも金融緩和が進み、企業業績にも好影響を及ぼすことになりそうだ。
東京株式市場の株価もそのことをすでに観測。選挙前、選挙後に、為替は円安方向に振れ、株価も上昇機運を見せている。
<国民総所得を上げろ>
国民にとってはどうなのか。国全体の経済がよくなったとしても、それをより多くの国民が実感できなければ景気がよくなったとは言えない。仕事が忙しくなったとしても給料が上がらなければ意味はない。永濱氏は、景気の上昇を実感するため指標として、対外投資を含めたGNI(国民総所得)に注目している。
GNIとは、国民の総所得を示す指標で、GNIには、国内の総所得であるGDIに加えて、対外投資で得た配当金などの収入が含まれる。国の生産力の指標GDP(国内総生産)を上げる政策よりも、GDI、GNIを上げるための政策の方が、国民の財布にとっては、"実利"があり、家計の消費が回りまわって、日本経済全体の活性化につながる。
永濱氏は、「GDI(国内総所得)は、国力を示す指標で、本当はGDIを上げる方が一番いいのですが、日本は人口が減少していくので、国内で所得を上げることが難しくなっている。したがって、GNIを上げることを目標にするのが現実的でしょう。国民の総所得は、主に企業が稼ぐ。家計も企業の収益に支えられている。すなわち、GNIを増やすことが、日本の活路」と説明する。実質GDPが上がっただけでは、景況感は実感しにくいが、GNIが上がれば、実感しやすい経済になる。
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