<産業の6重苦を取り払え>
しかしこれまで、そのGNIを上げるための効果的な政策は取られてこなかったのが実情だ。「これまでの日本では、このGNIを上げるための政策がほとんど行なわれていません。結果的に"産業の6重苦"になっています。この6重苦を取り払わなければなりません」と永濱氏。
その6重苦を解消する1つ目の施策は、円高の解消。日銀の金融緩和が徹底されず円高で止まっていることが、経済を停滞させたからだ。そして2つ目は、法人税を下げ、企業の雇用機会を増やすことだ。
そして3つ目は、経済連携協定の遅れを取り戻すこと。これは、諸外国との経済的な結びつきを強め、企業にグローバルに活躍してもらうことが目的。「経済連携協定については、アジアとの連携などを含めて、諸外国との連携を取っていく動きが鈍いです。TPPも、交渉に参加しなければ、前に進まないのではないでしょうか。また、TPPだけではなく、日中韓FTAや、地理的にも近く今後さらに成長が期待できるアジアとの経済連携も強めていく必要があります。ほかの先進国と比べると、海外との経済連携を締結している割合は少ない」と永濱氏は提言する。
<労働市場の活性化>
さらに4つ目には、労働規制を取り払うことを挙げる。永濱氏は、「環境次第では、正社員を解雇しやすくした方がメリットが大きい場合があります」と、逆説的で画期的なことを述べる。
民主党政権下で製造業での派遣が禁止になったが、逆に雇用の流動性は失われた。これは、一見、雇用が守られているかのように見えるが、これから採用される若者や学生からしてみると、労働規制が緩和された方がメリットがある――と永濱氏は分析する。
「企業は解雇できないとなると、採用に慎重になります。すると、逆に雇用を見送ったりすることもあるのです。そのため、規制を緩和した方が、雇用情勢全体は活性化すると見ています。欧州諸国では、職業訓練を受けることを前提に失業保険が支払われるなどの政策が取られています。仮に職を失ったとしても、もう1度、労働市場に出るのだというモチベーションを高めるような政策を、日本でも打っていくべきです」と話す。
労働市場の流動性が上がる方が、積極的な転職にも打って出やすくなる。そしてそれは、スキルを上げてさらに環境の良い職場を得るための、労働者のモチベーションアップにもつながっていく。
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