<不祥事の副産物>
――今年、現場レベルで、飲酒が関わるトラブルなどの不祥事が相次ぎましたね。
髙島 いわゆる「自宅外禁酒令」への賛成・反対も含めて役所のなかで随分と話し合いがもたれました。また、職員全員にアンケートをとり、「市役所に何が必要か」という質問への回答をいただいて、結果を分析しました。そして、「なぜ、不祥事が起きるのか」という話のなかで、「実は役所のなかで対話がなくなっている」という実情がわかりました。
もっと職場内で対話をして、仕事だけではなく私生活でも「お互いがどういうものを抱えているのか」ということを知る機会が少なくなっていました。
だから、もう1回、職員間での対話を活発化し、現場レベルでどんどん工夫していこうという認識が広まっていったのです。
――職場の雰囲気が良い方向に変わってきたのですね。
髙島 はい。各職場における対話が、「自宅外禁酒令」以降、非常に盛り上がってきましてね。そして来年度は、現場の改善についてどんどん声が出せる、ちゃんとやる気がある人が報われ、生かされるような、そういう役所を目指そうと考えています。
――アンケートの分析から、職場への帰属意識やモラルがなくなることについて、どのような原因があると見られましたか。
髙島 やはり、無駄な業務を減らしていくということが大事ですね。「本当に行政がやるべきことは何なのか」を考えて、民間でやるべきことは民間に任せていき、仕事を減らすと同時に人も予算も減らすということもしないといけません。ところが今までは、多様化するニーズを全部受け止めながら、人と予算を減らしていたため、だんだん人と対話する余裕すらなくなってきていたのです。市民サービスを向上するためにこういうことをしたいと言っても採用されず、モチベーションが落ちていたという話もうかがっていました。だから、行政にしかできないことに集中していきながら、同時に現場での改善も図り、そして、頑張った人を評価するという体制を作っていきます。
――市職員の不祥事が『経営者』としての勉強にもなったようですね。
髙島 時間外に職員が集まり、職場のみんなが何を考えているかということについて、自主的に話し合うグループもできました。これまでは不祥事が起きた時に綱紀粛正を通知していましたが、今回はみんなが自分のこととして真剣に考えた。そのなかから今後につながるいいヒントが得られました。それが職場の活性化の素になっていくので、長い目で見れば、福岡市役所が生まれ変わるきっかけになったと思います。
――それは大きな経験ですね。これまで「首長による市民への情報発信が使命」と話されてきましたが、市役所内のことについても理解をし、職員さんたちのやる気をもたせるように治めることも市長にとって必要ですからね。
髙島 私は、課長にも部長にもなったことがないんです。それは市民のみなさんも知っています。現場のキャスターだったのですから。10年の市長選で、現職、市長経験者、元教育長などと、いろんな行政の専門家がいるなかで、あえて私を選んでいただいたのは、ある意味、「得意なところを活かしながら、しっかり勉強してね」ということだったと思います。
市長1年目を終わった時、私が「120点」と言ったら、「それは言いすぎじゃないか」と言われましたが、真意は「120点」ではなく「常に120%」なんです。市長職は、私が20%の余力を残して80%でいたら、とても務まる仕事ではありません。だから、私は「常に120%」の力で頑張っていかなければなりません。
市民のみなさんから、行政経験がない私に、責任の重い、簡単ではない仕事をお任せいただいたのですから、私は2年間痛い思いをしながらもいろんなことを必死に学び、そのなかで自分の得意分野である「発信力」を活かしてきました。
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