<日銀はなぜ円を刷らなかったのか>
日本銀行は、ここまで円高が長引く前に、なぜ円をもっと刷らなかったのか。
「中央銀行が国全体の経済よりも"通貨の信任"に重きを置いたから」と、永濱氏は言う。
日本経済は、80年代から90年代にかけて、バブルを形成し、崩壊した。その経験が、トラウマとなっている。「中央銀行の総裁らの心理として、緩和策をやるにしても、やりすぎてはいけないという心理が働いた。すなわち、先例がなかったということもある」。
イギリスの中央銀行であるイングランド銀行では、「インフレ目標」を達成できなかった場合には、中央銀行のトップは、政府に対しての説明をする責任があるという。「日本にはそういうルールはなく、仮にデフレ脱却ができなくても、責任を取ることはない」。
アメリカの中央銀行であるは、失業率基準を導入するなど雇用情勢を常に注視しているのに対し、日本銀行はそうではない。
「アメリカでは、のバーナンキ議長が量的緩和を行なって、米経済には効果が出ている。日銀も、逃げ道はない。名目GDPに対する上場企業株式の時価総額を見ても、あまりに株価の水準が低く抑えられている。テコ入れするべきでしょう」と、デフレ脱却と円安に向けて、日銀は、金融緩和策をさらに進めざるをえない状況になってきている。
<東南アジアを巻き込め>
今後の日本経済を考えるうえで、アジアとのつながりは欠かせない。2010年時点で、アジア全体のGDPが世界全体に占めるシェアは約25%。25年には、アジア全体のシェアが約35%にまで拡大すると見られている。アジア、特に東南アジアとの関係強化が日本再生へのカギとなる。「ここまで急成長してきた中国は、相対的には、今後も高い成長をするでしょうが、減速は避けられない」と永濱氏。中国は、00年以降、急速にGDPを伸ばし、中間層は増えたが、貧困層にとっては、「実感」を伴わない経済だった。そうした中、昨年、日中関係が悪化している。
永濱氏は「中国で起こった反日デモでは、短期的に見れば経済的に大規模の損失が出ました。一方、長期的な観点で見た場合、今後も伸びるであろう東南アジアに目を向けるきっかけとなった。このタイミングで、東南アジアにシフトしていけば、日本にとって長期的にはプラスになる点は無視できないでしょう」と分析する。
東南アジアの中でも期待できる国として、「消費市場のボリューム、資源でインドネシア。進出しやすくて事業環境のいいタイ、マレーシアは引き続き注目でしょう」と語っている。
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