2011年9月1日、出水市の市立中学に通っていた中学2年生の女子生徒が、九州新幹線の線路に投身自殺する痛ましい事件が起きた。
あれから2度目の正月。「今回の事故の直接のきっかけとなる出来事は、確認できなかった」と結論付けた市教委の調査報告書に納得がいかない遺族は、今もなお真相究明を切実に願っている。
今月5日、遺族の元を訪れた記者に対し、いじめが自殺に強く関わっていると感じさせるひとつの事実が示された。
"いじめ"ではなく"いたずら"とし、その都度、現場で指導してきたと主張する市教委の調査報告書。その"いたずら"のなかには物品の紛失など、"いじめ"の事象と言える内容が含まれている。また、女子生徒の遺族には、同級生やその保護者から、「女子生徒がいじめられていた」という情報が寄せられており、そのなかに、自殺する3日前の11年8月29日、女子生徒が所属していた吹奏楽部で2年生同士の衝突があったという当時3年生の女子生徒の証言があった。
自殺した女子生徒が、カバンを蹴られたりしたという出来事を知っていた、という吹奏楽部の3年生の女子生徒が複数いたが、彼女らは、女子生徒の自殺を知った9月2日、泣き崩れ、過呼吸となり、次々に保健室を訪れたという。
このことは11年10月24日、遺族の自宅に呼ばれた校長、担任、部活顧問、養護教諭4人の前で生徒および保護者が証言しており、4人はその事実を認めている。しかし、それ以前に、遺族からの「保健室へ相談に来た生徒はいないか」との問い合せを受けた養護教師は「誰もいない」と答えていたのである。いったんは、事実関係を隠したということだ。
8月29日の事件が、9月1日の自殺に影響がなかったとは言い切れまい。
全校生徒に実施されたアンケートを、遺族へ開示するよう求める署名は1万名を超えた。教育への問題意識から遺族に協力する人も増えている。最初に署名を市教委に提出した12年8月9日の時点では3,824名。その際対応し、署名に一瞥もくれず「開示できない」と告げた溝口省三教育長は、12年12月25日の署名受け取りを部下の課長に任せ、姿を見せることはかった。
「自分の子どもが(女子生徒の)自殺を止められなかったことを悔やんでいる」という保護者がいる。「正直に話しているのに、学校は違うことを言う」という子どももいる。市教委にはこうした声に対する説明責任があるはずだ。
大人たちがいくら事実を隠しても子どもたちは知っている。その隠された事実が心に残り、社会不信にもつながる。子どもたちを一生苛むことさえあるだろう。一体、誰のための教育なのだろう――。
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