<大蔵事務次官指定ポストの全国地方銀行協会会長>
谷正明福岡銀行頭取の全国地方銀行協会(以下、地銀協)会長就任のお祝いはいずれ行なわれるであろうが、地元経済人、とくに中小企業の経営者には、この画期的な人事の意義を理解していない方がいるようだ。ここで改めてその意義を説明しておきたい。後述するが、この会長ポストは、かつて大蔵事務次官の指定席であったということでも分かるほど、貴重なものである。その重い役職に、役人とはまったく関係のなかった福岡銀行生え抜きの谷頭取が就任するという意義は、一言で語れないほどビッグなものだ。同氏が強運の持ち主であることは否定しないが、実力で勝ち取ったところに意味がある。だからこそ、新年第一弾の【傑物】として、ご登場いただいたのである。
昨年4月、日本医師会会長に福岡県医師会会長の横倉義武氏が就任し、福岡の政財界関係者が参加して盛大に祝賀会が催された。横倉義武氏の日本医師会会長就任の快挙は、本人の功績が評価を受け、福岡県医師会の役割が中央に認められた賜物である。それに匹敵する朗報が、谷頭取の地銀協会長就任である。福岡銀行の存在(経営業績含む)が地銀協のなかで高い評価を受け、それを支える福岡県の経済活動力が逞しいという証でもある。
【資料1】を参照されたい。歴代17人の会長がいる。初代からしばらくは各銀行の生え抜きが続いており、4代目となる静岡銀行の平野繁太郎氏が11年間会長職にあった。しかしこれ以降、地方銀行に対する大蔵省・日銀の行政指導が強まったため、天下りポストとなってしまう。まず大蔵省理財局長から横浜銀行に天下りした伊原隆氏は、7年間会長の職に就いた。1年おいて大蔵事務次官であった大物・吉国二郎氏が横浜銀行に移籍。この頃から横浜銀行は大蔵事務次官の天下り銀行に決定された(自動的に地銀協会長に就く前例となる)。
吉国二郎氏は9年間会長職にあったが、それ以降、第13代目平澤貞昭氏まで大蔵省と日銀のOBで交互にポストを持ち廻りしている。有名なところでは、広島銀行頭取として会長に就任した橋口収氏。同氏はその後、公正取引委員会の会長としても活躍した人物である。
歴代17人の会長のなかで、5名が大蔵事務次官経験者。この事実は、高級官僚の世界で全国地方銀行協会会長の地位が嘱望されていた証明である。
時代が天下りを許さない状況になってきたのであろう。15代目の小川是氏(大蔵事務次官)が4年間会長職を務めた後は、各銀行の生え抜き頭取が2代にわたって職責を全うしている。また、会長任期を1期1年と内規で定めたようで、静岡銀行、千葉銀行の頭取がそれぞれ1年間、会長ポストをこなしたのであれば、『次は福銀さん!!』と声がかかるのが、自然の成り行きであろう。谷頭取自身も2008年から10年まで副会長を務め、さらに2012年から再度、同職に就いていた。次期会長の座を射止めるための充分な準備を行なっていたのである。
<全国地方銀行協会とは>
《一般社団法人全国地方銀行協会》は、地方銀行の健全な発展を通じて金融経済の伸張に寄与し、もって公共の利益を増進することを目的としている。会員は、「銀行法により免許を受けた銀行であって、主たる営業基盤が地方的なもの」(定款第4条)であり、金融庁はこれを『免許・登録一覧』に於いて、「地域銀行/地方銀行」に区分している。現在、会員数は64行にのぼる。
協会としては、主に会員各行の意見をとりまとめ、提言を行なったり、新たな金融商品や経済の動向について調査・研究などを行なう。また、ACS(全国カードサービス)という加盟各行のキャッシュサービスを接続するネットワークの管理・運営も行なっている。このACSはMICS(全国キャッシュサービス)に接続され、日本国内のほとんどの金融機関のキャッシュサービスが地方銀行のATMで利用できる《以上・ウィキペディアより引用》。
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