<脱石油のための努力>
21世紀になり、全世界が今までのように石油エネルギーに依存して持続的な発展を成し遂げるには、さまざまな問題があることを認識し始めた。二酸化炭素発生による地球温暖化、枯渇が懸念される今までの資源に変わる新しいエネルギー開発の必要性、そして高い価格および不安定要素などの理由で、世界は今新しいエネルギーを求めている。
日本の場合、中東エネルギーの依存度とコストを下げるため、その代案として原子力エネルギーを導入してきたが、先の東日本大震災によって原子力の危険性が一般人にも露呈し、また最終コストを考えてみても、それほど有効なエネルギーではないということに気づいた。
今、全世界はソーラー発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」にも、代替エネルギーとしての役割を期待している。ただソーラーの場合はまだ発電コストが高く、政府の補助金政策なしでは成り立たない現状がある。発電パネルに使用されるシリコンの製作過程での電気の使用量が多く、変換効率の面でも今後さらなる技術的革新が要請される。
風力の場合、コスト面では既存の火力発電との競争が可能になるまで下がってきた。しかし、設置にあたっては風況の良いところが偏っているため、送電線問題などのインフラの問題がネックになっているのが実情である。海洋国家日本にとっては、送電線を整備したうえで、洋上風力発電を積極的に進める必要があるだろう。日本の関連分野への技術的なポテンシャルも高く、"産業"として育成する必要がある。
アメリカの場合には、技術革新によるシェールガスの商用化が可能になったことで、エネルギー政策の軸が変わり、中東の依存を減らそうとしている状況だ。環境負荷も少なくコストも安いため、世界で最もシェールガスの開発が進んでいる。しかし、その一方で、岩石からガスを取り出すため、地盤沈下などへの懸念が生じているともいう。
石油の消費量のなかでも、大きな比率を占めているものの1つが自動車である。こちらの場合でも、電気自動車の開発による"脱石油"を目指しているが、現実的にはバッテリーの問題などで普及が遅れている。充電時間や航続距離の問題、そしてバッテリー候補として一番有力視されているリチウムイオン電池の高価格などがその要因だ。
一般にはまだ知られていないが、リチウムイオン電池の場合、衝突時の爆発危険性もあり、電気自動車が既存の自動車の代わりになれるかどうかはいまだにわからない。ただ、安全でコストの安い材料の開発にしのぎを削っているため、その量産が可能になれば新しい局面を迎えることも否定できない。
再生可能エネルギーをはじめとしてさまざまな選択肢が模索されているが、それでも石油が21世紀においてもエネルギーの軸であり続けることは間違いないだろう。
<石油市場の1つの動き>
石油市場には最近、新しい動きもある。たとえば、個別取引では相場と違う価格で取引されることもあり、"二重価格"が存在するという現実だ。仕入価格を下げる努力は一筋縄ではいかないが、このような市場の状況を考慮すると、たゆまぬ努力が要求されるのも事実だろう。
石油に対する依存度を減らす一方、仕入に関する情報収集などを通じて、戦略的なアプローチが必要となろう。まだまだ売り手市場である石油市場だけに、売り手との緊密な関係など、複雑な要素が絡んでいる。
重要なのは、常に良い条件の仕入が可能になるような努力である。
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