他方、我が日本国についての見通しは決して明るくない。どのような政権下でも、日本では人口減少と高齢化という流れは留まる兆しが見えず、その結果、経済成長におのずと陰りが見られるからだ。ほとんどの欧米諸国と比べ、日本の少子高齢化のスピードは前代未聞であり、国家としての長期的な成長を阻む最大の不安定要因となっている。2025年までに「高齢者一人を若い勤労者2人で支える」という厳しい財政状況が目前に迫っている。それにも係わらず、こうした危機的状況を打開する効果的な政策が打ち出されていないがゆえに、日本に対する評価と期待値は低いものに押しやられているわけだ。
言うまでもなく、ヨーロッパやロシアの状況も厳しいものがあり、2030年代まではゆるやかな経済減少傾向が続くと見られる。注目すべきは、現在、中進国と目されている国々の目覚ましい経済発展が確実視されていることである。たとえば、メキシコ、コロンビア、エジプト、トルコ、イラン、南アフリカ、インドネシアなどへの期待値が高い。
また、この報告書が注目しているのが世界的に広がる水・食糧・エネルギーの需要の高まりに対応する新たなテクノロジーの果たす役割である。2030年までにこうした分野における需要は各々35%~50%まで高まるものと予測されている。水需要一つをとっても、40%を超える需要増は確実だ。南アジアや中東地域では水をめぐる争奪戦も激化しそうな雲行きである。
さらに、今後も人口増加が見込まれる中国やインドにおいては、富裕層が急拡大しており、海外からの食糧やエネルギーの輸入が急増する。その結果、国際的な穀物、エネルギー価格の高騰がもたらされるに違いない。
現在、世界の人口は71億人。2030年には83億人に膨れ上がる。しかも日本が経験しているように高齢化が世界的な現象となり、平均年齢も高くなる一方である。こうした人口動態の変化は福祉、医療に限らず社会全体にかつてない大きな課題を突き付けることになるだろう。
アメリカがこうした課題を克服するうえで、将来を楽観視している要因としてシェールガスの存在が指摘されている。近年、急速に開発が進むようになったこの新たなエネルギー源により、アメリカは国内の天然ガス需要を補って余りあるだけではなく、世界に輸出できる可能性を手にしつつある。
従来、中東地域を中心とした石油や天然ガスをめぐる争奪戦が展開されてきたが、このシェールガスの開発により、アメリカは起死回生のカードを手にしたと自信を深めている。とはいえ、こうした新たなエネルギー源がもたらす環境負荷の増大や独占的な価格設定のあり方に関しては、今後、新たな紛争の火種になりかねない側面もあり、十分な注意が必要であろう。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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