2012年４月、九州工業大学は飯塚市に「バイオメディカルインフォマティクス研究開発センター」を開設した。その背景には、飯塚市、飯塚病院と同大学の３者が連携して推し進める「医工学連携」の取り組みがある。今回、情報工学部長の延山英沢氏と本センター長の倉田博之氏に、医工学連携の展望と課題について話を聞いた。

＜医学系ベンチャーへの期待＞
　――失礼ながら、こうして飯塚市について取材するまで、私にはあまり「飯塚＝医療のまち」というイメージがありませんでした。

　倉田　実は、すでにバイオ関係のベンチャー企業を立ち上げ、利益を出されている先生もいらっしゃいます。今後のセンターの方針として、医療関係にすでに関わっている企業と共同研究をしながら、医療産業に関わる飯塚市内の地元業者が少しでも増えてくれればうれしいと思います。

　延山　今回連携する飯塚病院さんは、医療器具作製にも非常に興味を持たれています。九州工業大学飯塚キャンパスの「マイクロ化総合技術センター」というところで、さまざまな医療器具をつくっていこうという話をしているところです。これは九州工業大学の知財アドミニストレイターが積極的に取り組まれていて、病院側のアイデアをかたちにして試作品として使えるかどうかを判断していこうと考えています。

　本学はもともと医学系ベンチャー企業を立ち上げた方が多く、これから企業数はもっと増えてくると思います。これからの社会に必要な介護用ロボットやセンサーなどの研究開発もかなり増えており、情報工学で役に立つことは身近なものでたくさんあります。

　――今まであったものを生かした"飯塚発"の新しい産業を、医学の分野からつくれそうですね。

　倉田　私もセンター長として、これから医工学連携や当センターの役割をどう周知するかが課題だと思っています。現在は飯塚が活動拠点ですが、近く福岡や北九州でも研究会などを開催していきたいと思っています。

　延山　ところで、日本の工学系学部では「技術者を育てよう」とよく言われますが、読者の皆さんに「技術者」にはどのようなイメージがあるのか知りたいですね。この前、オープンキャンパスに来られていた親子の方がいらっしゃって、父親の方から話を聞いて見ると「技術者って工場で旋盤なんかを扱う人のことじゃないの？」と言われました。

　――たしかに、そのようなイメージで語られるかもしれません。高度経済成長期の重厚長大産業に関わる労働者というのが、「技術者」という言葉に対するイメージとして残っている面もあると思います。

　延山　そのため「工業大学」というと、どうしても硬いイメージになってしまうようです。情報工学部は普通の工学部に比べて女子学生の割合が高いので、キャンパスは明るい雰囲気で、昔の工業大学のイメージとは違った華やかさもあるのですが。

　倉田　日本は「技術者」のレベルが高く待遇も良いのです。しかし海外での技術者、英語で言えば「エンジニア」ですが、彼らはどちらかというと下働き的意味合いの強い位置付けになります。我々のような存在は「サイエンティスト」と呼ばれます。日本語で言えば「科学技術者」ですね。

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