<管理栄養士が広く国民の食生活を改善・啓蒙!>
―― 一般論で、医師はサプリメント(健康食品)を毛嫌いするように見えますが、何故ですか。
田川 1つには、よく言われているように所属団体との壁があると思います。しかしそれ以外にもいくつか理由があります。例えば、サプリメントのために、与えていた薬が効かなくなり、病状が悪化するケースが現実に起こります。
先に名前の出ましたEPA(エイコサペンタエン酸)ですが、この成分が入っている健康食品も出ていると思います。血がサラサラになる効果は確かにあるのですが、その副作用として血が止まりにくくなることもあります。そこで、医師は手術の時は服用を止めます。
EPAは1日、1800mgが常用量という事になっていますが、EPAのサプリメントを誤ってたくさん服用する人が出た場合、血が止まらなくなる危険もあります。脳出血等が起こる可能性もゼロとは言えません。
私は患者さんに、飲み合わせで悪いものに関しては、はっきりお伝えし、禁止しています。例えば、私たちはワーファリンという薬(血をサラサラにします)を処方することがあります。ワーファリンは、サプリメントのクロレラ、青汁等を一緒に飲むと効果がなくなることが分かっています。したがって、ワーファリンを服用している患者さんにはこのようなサプリメントの服用を禁止しています。
このようにはっきり分かっている以外のものに関して、患者さんが勝手にサプリメントを飲まれる場合には、推薦も批判もできません。批判すれば営業妨害になるでしょう。患者さんから、「このサプリメントを飲んでいいですか?」とよく聞かれます。しかし、私ども医師は自分が処方する薬以外は良いとも悪いとも言えないのです。それは、責任を負えないからです。自己責任で患者さんに判断していただくしかないのです。
本当にいいものは良いと言いたいのですが、確実なエビデンスがなく、自分で処方経験のないものにお墨付きを与えることはできないのです。
さらに言えば、日本人と欧米人とは体の大きさも違うのですが、分解酵素にも違いがあります。薬の量にしても、同じ効果を出すために欧米人は日本人の数倍の量が必要なケースもあります。日本人には効きやすい薬でも、欧米人には効きにくい薬もあります。輸入品等を含めて慎重に対処することが必要なのです。
――最後に、読者に対してメッセージをお願い致します。
田川 健康食品を、正しい食生活の補助として使用されるのは良いと思います。しかし、使い方を間違えると毒にもなります。関連法規がない事も影響して、管理がずさんに見え、またしっかりとしたエビデンスもないのが現状です。
基本的に病は、特に生活習慣病は、食事や運動である程度予防・改善ができます。日本には「日本食」と言う非常に優れた文化があります。それを上手く利用していくことです。私は生活習慣病、特に血管病を減らして行きたいと思っています。医療費の問題も重要ですが、何よりも心筋梗塞や脳卒中になると、日常生活が不自由になり、死に到ることもあるからです。薬に頼らず栄養で充分に予防、改善ができることを理解して欲しいと思います。
その為には、医者と同様に管理栄養士が重要な役割を果たすことができます。管理栄養士が、病院や学校、食品会社、化粧品会社だけでなく、広く国民の健康・栄養相談にのることができれば良いと思っています。引き続き、管理栄養士が一般の方の食生活改善を啓蒙していけるように私も応援していくつもりです。
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<プロフィール>
田川 辰也氏
1989年九州大学医学部卒業、九州大学医学部循環器内科に入局、日本学術振興会特別研究員としてシドニー大学に留学(1997年7月~1999年12月)、北九州市立医療センター循環器科部長を経て2002年琉球大学医学部医学科臨床薬理講座助教授。2006年西南女学院大学保健福祉学部栄養学科教授に就任、現在に至る。
日本循環器学会認定循環器専門医、日本高血圧学会認定高血圧専門医(特別正会員、評議員)他所属学会多数。2000年第5回ファイザー循環器病研究助成「自律神経と高血圧」(優秀賞)、2004年第9回ファイザー循環器病研究助成「自律神経と高血圧」奨励賞他受賞多数。
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