西日本一の歓楽街と言われる中洲もまた、時代とともに変化している。最近では、高度経済成長期に中洲でひと花咲かそうと商売を始めた経営者たちの引退が増加――。客層も変わった。ウン百万の腕時計を酔った帰りに札束で買っていたバブリーな中洲っ子は絶滅危惧種となり、膨らんだ掛けとともに姿を消す者も珍しくない。その代わりに飲み屋のコストパフォーマンスにやたらとうるさい「新・中洲っ子」が増えている。
暗い話は中洲に限ったことではなく、日本全国の繁華街が青色吐息なご時世ではあるが、それでも中洲に夢を見るニュー・ジェネレーションは少なくはない。経営者の引退とともに空いたテナントには、立地条件で差はあれど、新しい店が次々にオープンしている。中洲の物件を数多く手がけるライン不動産では、仲介手数料と前家賃をゼロにするキャンペーンを2月末まで実施中。実際に自分の店を出した経営者からは「開店資金が抑えられる」と、好評だ。こうした努力もあり、中洲の灯が一気に消えるようなことはなさそうである。
博多川近くのレビュー中洲1階で、今年1月7日にオープンした「PIERROT(ピエロ)」(中洲2-7-2)は、業種的にはスナックとなるが、異業種からの中洲初出店となるオーナーのT氏曰く、「今までの中洲にない店作りをした」新店である。中洲で飲み歩き、客の視点から、新店のイメージを膨らませていったというT氏。小生がお邪魔して、まず気づいたのは、店長以下、スタッフの新鮮な雰囲気だ。聞けば中洲(水商売)ははじめてという声が多い。たしかに中洲の飲み屋で経験を積んだベテランさんなら、安心して店を任せることができるが、看板や内装が変わっただけで、その店の雰囲気は「新店」と言えない。
「すべてが逆の発想で、家庭的な雰囲気で楽しく飲める店を目指した」というT氏は、あえて中洲に染まっていないスタッフに現場を任せた。女性でも来やすいようにと、壁紙やグラスに、某人気キャラのデザインをあしらう。料金面でも女性のセット料金は男性の半額などと、会社の2次会、3次会で老若男女問わず、気軽に寄れるような工夫がされている。客層のターゲットをしぼらず、間口を広げたのである。「1度、中洲の飲み屋を見てみたい」という女の子ならデート・スポットとして使ってもいいと思えるような雰囲気だ。
小生も実際に飲んでみたが、中洲歴こそないがスタッフの接客経験は申し分なく、1人で飲みに行っても存分に楽しめた。『フォアグラ化した肝臓』の具合も気になるが、さっそくボトルを入れ、小生もリピーターになってしまったのである。
なお、同店では、お客さんとのコミュニケーションを充実させるために、フェイスブックも利用(萬月おすすめリンクにバナー有り)している。お店のページでは、お得なキャンペーンの情報が記載されることもあり、23日現在、「午後8時から午後9時までの入店の場合、60分3,000円飲み放題」を実施中。お店のページに「いいね!」を押すと、最新情報がお知らせされるので、チェックしてみるといいだろう。
新しい風が中洲にどのような変化をもたらすのか、2013年の取材テーマの1つである。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポートしてきた男の遊びコンサルタント。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の歓楽街関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲(福岡市博多区)にほぼ毎日出没している。
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