<対中感情が影響か>
時事通信社が1月11日から14日にかけて実施した世論調査で、安倍晋三首相の靖国神社参拝について、「参拝すべきだ」と回答した人が56.7%に上った。この数字の背景には、昨年からの対中感情の悪化があると思われる。一方、「参拝すべきでない」は26.6%にとどまった。
安倍氏は、首相在任中に参拝するかどうか明言を避けているが、参拝賛成の世論が一段と高まれば、春の例大祭に参拝する可能性も出てきている。
<支持政党別でも賛成が反対を上回る>
支持政党別にみると、賛成派が一番多いのは、日本維新の会の支持者で74.6%。次いで自民党支持者66.1%、みんなの党の支持者64.7%と続いている。「親中」派の公明党の支持者でも賛成派が47.2%で、反対派37.7%を上回った。
民主党支持者は賛否が2分し、賛成派46.4%、反対派44.9%となった(社民党、日本共産党の数字は掲載するにも値しないので省略する)。
支持政党別の賛否の数字イコール各党支持者のカラーが読み取れるが、自民党、日本維新の会、みんなの党、公明党の議席を合わせると、3分の2を超える議席数を有していることからも、日本国民の過半数以上が、首相の靖国参拝に賛成していると言える。安倍首相は迷うことなく正々堂々と参拝するべきである。
<小泉首相以降の参拝はない>
首相の靖国神社参拝は、小泉純一郎首相を最後に1度も行なわれていない。首相の参拝は、戦後、日本の主権回復と同時に再開された。当初は中国も韓国も参拝に反対していなかった。
昭和27(1952)年、社会党の堤ツルヨ衆議院議員の「遺族は国家の補償も受けられないでいる。しかもその英霊は靖国神社のなかにさえも入れてもらえない」という発言がきっかけとなり、翌年8月の特別国会で「遺族援護法」が全会一致で改正される。その結果、「連合国の軍事裁判で有罪(A級~C級戦犯)とされた日本人は日本の国内法では罪人と見なさない」という判断基準が明確に示され、遺族に年金などが支給されるようになった。
野田佳彦前首相は民主党が野党の時代の平成17(2005)年10月、日本政府に対して、「すべての『戦犯』の名誉は法的に回復されている。『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではない。戦争犯罪人が合祀されていることを理由に首相の参拝に反対する論理は破綻している」とする質問主意書を提出している。
これに対して、日本政府は閣議で、「先の大戦後、連合国によって『戦犯』とされた軍人・軍属らが刑死や禁固刑などを受けたことについて、国内法上は戦犯は存在しない」との見解を明確にした答弁書を決定している。あわせて首相の靖国神社参拝に関しても、公式参拝であっても憲法に抵触しないとの見解を示した。
しかし野田氏は、首相在任中に1度も靖国神社を参拝しなかった。昨年(12)の8月15日には、野田内閣の閣僚に対し、公式参拝を自粛するよう指示を出したため、松原仁国家公安委員長と羽田雄一郎国交相の2人だけが私的参拝しただけだ。
本来、首相を務める者は、英霊たちが国を守るために戦った歴史を絶対に忘れるべきではない。野田氏の態度は、ダブルスタンダードそのものであり、政治家としては最も信用されない行動である。
<安倍カラーを出すことを恐れるな>
安倍首相は今年夏の参議院選挙までは「安倍カラー」を封印し、デフレ脱却・経済対策に専念するとしているが、前述の通り、日本国民は首相の靖国神社参拝に賛成の意思表示をしている。安倍氏が参拝しないということは、日本国民を裏切る結果になりはしないか。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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