2012年4月、九州工業大学は飯塚市に「バイオメディカルインフォマティクス研究開発センター」を開設した。その背景には、飯塚市、飯塚病院と同大学の3者が連携して推し進める「医工学連携」の取り組みがある。今回、情報工学部長の延山英沢氏と本センター長の倉田博之氏に、医工学連携の展望と課題について話を聞いた。
<飯塚から世界へ>
――九工大は高い就職率を誇る大学として有名ですが、受験レベルではそうしたことはあまり考慮されていないように感じます。
倉田 私の研究室からも、すでに世界に羽ばたいている学生もいます。とくにアジア方面での技術開発の仕事が多いですね。地元の人たちと働く立場ですから、外国人とのコミュニケーション能力は長けていると思います。企業もそうした人材にどんどん海外に出てほしいと思っているでしょうから、そういう意味では情報工学部の学生は向いていると思います。
延山 学校のブランドイメージという点でいくと、福岡県内ではどうしても九州大学が別格というイメージになるのかもしれませんが、情報工学部ができた当初は、情報工学の分野では九大を凌ぐほどの人気がありました。この分野では我々は他の大学よりもずっと先進的な研究をしていると自負しております。
しかし、高校生から見れば、九大以外でも県名がついた総合大学の方がどうしても知名度が高くなります。学生のなかにも、九工大は九大の次くらいに思っている人や、就職するときに九工大から大手企業には入れないだろうと思っている人もまだまだ多いのです。
とはいえ、諸先輩方の就職先を見てもわかる通り、一流と言われる大学の出身者が行くようなところへ、本学の学生を多く輩出しています。企業関係者の方から「この大学は穴場ですね」と言われたことがありますが、企業の方からは高い評価をいただいていますので、就職して活躍できる場はいくらでもあるのです。
――高校生が場所を決める基準の1つに立地というものがあると思います。
延山 その点では、たしかに情報工学部は不利な状況と思われていました。しかし最近、約20分に1本、JR新飯塚駅から飯塚キャンパスまでのスクールバスの運行を始めました。そのおかげで、通学に不便はなくなったと思います。乗り継ぎが良ければ、JR博多駅からJR新飯塚駅まで快速で40分、そこからバスで10分くらいですから1時間はかからないはずです。
倉田 たしかに、スクールバス運行で通学はかなり改善されましたね。便利なので、私もときどき使っています。延山先生と同じで私も東京出身ですが、10年以上飯塚市内に住んでいます。緑豊かで職場も近いですから、個人的には住みやすいまちだと思っています。
延山 あとはやはり、JR福北ゆたか線が複線になってほしいですね。そうなれば移動時間が短縮できますから、利便性が良くなってかなりまちのあり方も変わると思います。
立地という面では、"飯塚市"そのものの過去のイメージもあるのかもしれませんが、私が20年前に来たときよりは雰囲気はずっと良くなっていると思います。当時は、炭鉱が閉山した影響が残っていましたから。市長も経営感覚のある方なので、これからさらに活性化してくるのではないかなと感じています。
教育という面では、最近は飯塚高校の製菓コースのおかげで「飯塚=スイーツ」というイメージができつつありますし、また医工学連携というかたちで「飯塚=医療のまち」として医療が新しい産業になれば、新しい人材も飯塚に入ってきて、まちの雰囲気も変わってくると思います。
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<プロフィール>
延山 英沢(のぶやま・えいたく)
1983年、東京大学工学部計数工学科卒業。1988年、東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了。1991年、九州工業大学情報工学部制御システム工学科助教授。2001年同教授。2008年より、九州工業大学大学院情報工学研究院システム創成情報工学研究系教授を、2012年、同情報工学部長に就任。
<プロフィール>
倉田 博之(くらた・ひろゆき)
1988年、東京大学工学部化学工学科卒業。1996年、化学工学会玉置明善賞受賞。2000年より九州工業大学情報工学部生物化学システム工学科助教授。2006年、同大学院情報工学研究院生命情報工学研究系教授。2012年、同大学バイオメディカルインフォマティクス研究開発センター長に就任。
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