＜そもそもなぜ"紙おむつ"に着眼したのか＞
　145億枚――これは、2011年における乳児・大人用紙おむつの年間生産量の総計である（（社）日本衛生材料工業連合会調べ）。乳児用が87億枚、大人用が58億枚で、この数は年々増えている。生産の次には消費があり、最終的には処理という手続きが控えている。省エネ、エコが叫ばれるなか、実は紙おむつ分野に関してはこれまで消費されるだけで、リサイクルという観点からのビジネスは発達していなかった。それを具体的にシステム化したのがケア・ルートサービス（株）だ。

　創業者の長武志社長は1945年生まれで福岡県糟屋郡出身。福岡大学第二商学部を卒業し、65年医療寝具関連企業に入社。20年在籍したのち、友人とともに会社を設立。その後、90年にケア・ルートサービスを設立し、92年（社）日本医業経営コンサルタント協会会員に登録した。長社長は独立以前、営業先の病院で「トイレに行きたい」と言っても「おむつをしているから」と放置されている高齢者の姿を目の当たりにした。「人間の尊厳に関わる排泄の問題を、このままにしておいて良いのか」――そうした想いが今日のビジネスモデルの基礎となっている。

　折しも、布おむつを扱う会社で営業をしていた友人から「寝具の会社をつくりたいから協力してほしい」と頼まれ、85年にともに起業した。会社を興して５年間、友人がさまざまな事業に挑戦するもののうまくいかず、長社長が代表を務めていたその会社を、黙って一番のライバル会社へ売りに行ってしまった。結局、事情を把握できないまま会社を売られてしまった長社長は、新たな事業を思案・模索した。そのなかで、「これから高齢化が進み、紙おむつの需要がきっと増えるだろう」と考え、90年のケア・ルートサービス設立に至ったのである。

＜産業廃棄物から一般廃棄物に、リサイクルシステム構築まで＞
　同社の事業は、紙おむつ販売が売上全体の約80％、そのほか介護用品の販売、リース、私物洗濯事業、マット消毒事業などが約20％という構成である。販売は「動脈産業」、処理は「静脈産業」となるが、同社が静脈に当たる紙おむつのリサイクルシステムを確立するまで、両方がそれぞれ別々に機能していた。2000年、産学官共同研究開発事業に認定され水溶化処理技術の開発に着手し、紙おむつ業界において完結型システムの構築に着手。それを担う会社として01年にトータルケア・システム（株）が設立された。02年には紙おむつリサイクルの特許を取得。03年、紙おむつリサイクルの事業化が本格的になった。そして04年、福岡県大牟田市のエコタウンに処理能力１日当たり20トンのリサイクル施設「ラブフォレスト大牟田」を建設した。

　布おむつは、品物を届けて汚れたものを持ち帰り、それを洗濯して再び届けるというシステムでまかなえる。長社長はもともと布おむつ業界の出身だが、過去には紙おむつは消耗品として売られており、使用後はゴミとして処分されるのが当たり前だった。同社が他社と違うのは、まさにここに着眼した点にある。「私は会社をつくったとき、『売ったものは責任を持って回収・処理する』という流れを1つのシステムにすることを考えていました」（長社長）。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■ケア・ルートサービス（株）
代　表：長　武志
所在地：福岡県大野城市中1-2-1
設　立：1990年９月
資本金：3,300万円
ＴＥＬ：092-504-5766
ＵＲＬ：http://www.careroot.co.jp/

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