紙おむつ市場は、病院施設で使われる事業系と一般家庭で使われる製品で市場として分かれており、前者が全体の30%弱、後者が70%強という。紙おむつは一部感染性を除き基本的には一般廃棄物で処理されるが、同社が得意分野としているリサイクルは産業廃棄物の許認可が必要となる。その許認可を得て、病院や福祉施設から出る紙おむつを対象に、2005年4月から国内初の紙おむつリサイクル事業を開始した。
その後、11年3月に一般家庭で使用された紙おむつの受け入れ、処理ができる認可を受け、10月から全国初となる、家庭から排出された紙おむつを自治体が回収しリサイクルするという地域循環システムを稼働させた。「私は当初から、最終的に紙おむつは一般廃棄物として処理される仕組みでなければいけないと考えていました。そこで、いくつかの企業の協力を得ながら、福岡県大木町を舞台としてこのプロジェクトに取り組みました」(長社長)。
町内のコミュニティセンターや公民館など必要な箇所55カ所に紙おむつ専用の回収ボックスを設置。住民は、1袋15円のゴミ袋に使用済み紙おむつを入れて回収ボックスに出す(24時間対応)。それを週に1~2回の割合で町が回収するという仕組みである。
<自治体が果たせない機能を民間の力で補完していく>
大木町、県リサイクル総合研究センター、同社らでプロジェクトを立ち上げ、社会実験を3年かけて実施。成果をもとに一般廃棄物処理施設の認可を得た。「ラブフォレスト大牟田」に持ち込まれた紙おむつは、パルプとポリマー、ビニールに分離し再生している。
長社長は一貫して、動脈と静脈が循環するシステム、自治体を中心とした完結型が生まれることを目指してきた。現在、使用済み紙おむつは建設資材などへリサイクルされているが、将来的には再生パルプを原料とした紙おむつの再生産を目標としている。いわゆる「紙おむつから紙おむつをつくる」ということだ。
それだけではない。同社の存在意義は、紙おむつを媒体とした、地域における高齢者とのコミュニケーションにおいて発揮されつつある。「地域のなかで自治体が本来果たすべき役割はたくさんありますが、目が行き届かないところで高齢者の孤独死などさまざまな問題が出てきています。民間事業者と協力することで、こうした問題を解決できる方法があるはずです。そう考えると、当社が目指しているのは、紙おむつリサイクルという循環のなかで、とくに高齢者に対して紙おむつを届けるときに安否確認ができる社会システムを構築し、孤独死などの問題を未然に防ぐことです」(長社長)。
こうした理念とそれにともなった実績が認められ、12年2月、創業15年以内の挑戦する起業家を表彰する独立行政法人中小企業基盤整備機構主催「Japan Venture Awards 2012」の「中小機構理事長賞」を受賞するなど、ますます事業に弾みをつけている。同社のビジネスモデルが高齢化を迎える地域社会において貢献する日は、そう遠くはないだろう。
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<COMPANY INFORMATION>
■ケア・ルートサービス(株)
代 表:長 武志
所在地:福岡県大野城市中1-2-1
設 立:1990年9月
資本金:3,300万円
TEL:092-504-5766
URL:http://www.careroot.co.jp/
<代表者 Profile>
長 武志(ちょう・たけし)
1945年、福岡県糟屋郡生まれ。福岡大学第二商学部を卒業し、65年医療関連企業に入社。90年、ケア・ルートサービス(株)を設立。92年、(社)日本医業経営コンサルタント協会会員に登録。2000年、産学官共同研究開発事業に認定され水溶化処理技術の開発に着手し、01年、トータルケア・システム(株)を設立。02年には紙おむつリサイクルの特許を取得し、03年に紙おむつリサイクルの事業化に着手した。
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■「日本を元気にする!福岡の特選企業107社」
発行日:2012年12月12日
発行人:児玉 直
取材・編集:(株)データ・マックス
発行所:(株)データ・マックス
定 価:2,100円(税込)・送料別
<ご購入申し込み先>
(株)データ・マックス
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389
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