<民間軍事会社が、海外進出企業の警護にあたる時代がやって来た!>
日揮はアルジェリアで起きた人質事件に巻き込まれ、前副社長で最高顧問の新谷正法(あらたに・まさのり)さんら日本人10人を含むスタッフ16人を失った。生き残った日本人は7人。今回の武装勢力による襲撃事件は、改めて日本企業に海外進出リスクをつきつけた。
<活動拠点を海外に置くグローバル企業>
まずエンジニアリング大手、日揮について触れる。
エンジニアリングとは、石油精製や天然ガス精製、石油化学、発電などのプラントを設計し、資機材を調達して建設する事業のこと。運転や保守まで請け負うこともある。
顧客は、各種プラントを建設しようとする大手企業や中央政府、地方自治体などがあり、世界各地に存在する。日揮は石油や天然ガス、石油化学のプラントが主力のため、顧客は国内よりも海外のほうが多い。アジアや中東、アフリカなど世界70カ国で、2万件以上のプロジェクトに参加した実績をもつ。
アルジェリアでは、今回、襲撃事件が起きた英石油大手BPなどと天然ガス田開発を進めているイナメスを含め3カ所でプロジェクトを手がけている。顧客はアルジェリア国営炭化水素公社である。
12年3月期の売上高は対前期比24.5%増の5,569億円。主力の総合エンジニアリング事業の売上は5,149億円。うち国内売上は1,261億円、海外売上は3,888億円。海外売上が4分の3を占める。中東が2015億円で最も多く、オセアニアの712億円、アジアの606億円と続き、アフリカは443億円だ。
同期の受注残高は同23.9%増の1兆4,416億円と好調。近年、受注を伸ばしているのがアフリカだ。08年同期に21億円しかなかった受注残は、アルジェリアの天然ガス処理プラントの受注で12年同期には963億円に増加した。
このように国内よりも海外を活動拠点にしているため、数々の修羅場をくぐり抜けてきた日揮は海外セキュリティー(安全対策)が万全な会社といわれてきた。それなのに武装集団に襲われ、多数の犠牲者を出した。他の会社は推して知るべしだ。
海外進出している企業は、どのくらいのセキュリティーコストがかかるのか。最近の事件を例に、検証してみよう。
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