<サブカルで若い力を集める――鳥取県>
地方活性化のツールに、"まんが"を選んだのが、鳥取県だ。ゲゲゲの鬼太郎の作者・水木しげるさんの出身地として知られ、空港も米子鬼太郎空港というユニークなネーミング。「まんが王国とっとり」を打ち出し、独自路線で突っ走っている。
サブカルチャーを地域活性化に活用した例としては、92年から高校生によるまんが甲子園(全国高等学校漫画選手権大会)を開催している高知県などがある。鳥取県は、「国際マンガサミット」(第13回、鳥取大会)の誘致に成功したことからサブカルチャーでの地域活性化に力を入れ始めた。昨年11月に開催し、一躍、まんが王国としての名を上げた。それまで県内にあったサブカルに関する団体やイベントを県として補助金を出してサポート。昨年8月から114日間行った「国際まんが博」では、鳥取市、米子市、倉吉市の県内3カ所を巡回し、目標集客数の300万人を超える約320万人を集めた。コスプレのイベントを開催するなど、これまで鳥取県と縁がなかった層にも魅力を発信している。
まんがやコスプレに興味のない人々から「盛り上がりは一部なのでは」との批判もあるが、若い世代にお金を循環させ、県がバックアップすることにより、若年層のやる気や積極性を引き出そうとしている点は支持したい。
<クリエイティブ産業で稼ぐ県に>
鳥取県東京本部・情報発信チームの田中祥一さんは、「若者に主体的にやってもらっている。若さをどう巻き込むかが地方活性化のポイント。来てくれる若者をどう増やしていくのか。まんがやコスプレなどのサブカルは若者に人気があり、若者の力が発揮できるところがいい」と県は、サブカルに興味のある若者が活躍できる場を提供する。
もちろん、製造業の誘致などもやりながら、選択肢を広げるための「産業興し」として、まんがなどクリエイティブ産業を支援していく。「製造業だけでは、県や地域を盛り上げられない。地方自治体がどのように稼いでいくかと考えた時に、コンテンツは、重要なカギを握ると思っています。クリエイターの支援も今後のポイント」と、「クール・ジャパン」ならぬ、クールな鳥取県を目指す。
昨年10月、まんがでの地域活性化に一日の長のある高知県と「まんが王国友好通商条約」を締結。人材育成、イベント開催で連携を図る。
少子高齢化が進む今後、建物や施設を建てるハード面よりも人材育成、イベントに工夫を凝らすソフト面がより重要さを増してくる。クリエイティブ産業を支援し、地域を盛り上げようとしている鳥取県、高知県の取り組みは、若いクリエイターや漫画家たちのモチベーションを高め、才能を引き出すことにつながる。クリエイターが育てば、発信基地ともなりうる。堅苦しくなく、既成概念や県の垣根にとらわれていないところもいい。短期的に結果を出すのは難しいケースかもしれないが、成功すれば、観光と、長期的な経済を見据えた人材育成、雇用創出がうまく絡み合う形になるのではないか。ただ、イベントなどに著作権が絡むため、ワンピースなど人気作のすべてを網羅できるわけではない点や秋葉原のようなごちゃまぜ感、サブカルイベント特有のマニアックな空気を打ち出せるのかどうか。課題は多い。鳥取、高知の両県には、ぜひ、成功例を築いてほしい。
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