某店の看板娘の姿を見かけなくなった。店長によると、別に辞めたわけではなく、「昼の仕事を始めてから、出勤が減りました」という。後日、久しぶりに出勤した本人に聞くと、パチンコ店のホールスタッフを始めたのだとか。その娘は、夜の商売に憧れて中洲で働き出した。小生が「看板娘」というだけあって、わりかし客の評判も良かったのだが、「夜だけではなかなか食っていけない」という。
このところ、「ヒマだから帰って」と、店の娘を早上がりさせるところは珍しくない。店にとって人件費を抑えるためだが、働く側にとっては稼ぎが不安定に。以前、昼の仕事を持つ娘が多いという記事を書いたが、現在、某中洲経営者の実感では、「(夜だけは)全体の20%ぐらいじゃないか」という。
昔は時給4,000円も珍しくなかったが、今は大体2,500円から3,000円くらいという。また、ドリンクバックやボトルバックがなくなっている店も増えた。「中洲で店を開ければ誰でも儲かる」は過去の話。激しさを増す生存競争のなかで、夜の蝶たちの稼ぎは確実に減っている。
ある派遣の娘は、「スナック、ラウンジ(キャバクラ)、セクシーパブ(おさわりOKの飲み屋)、風俗、何でもOKだけど、(派遣に)入れない時があります」という。業種を問わず、店によって明暗がくっきりと分かれている昨今、「突然忙しくなって派遣を頼む」というケースは少なくなった。
大人数を雇えない小~中規模店では、レギュラーの娘に頼りっきりになると、その娘が辞めた時に売上がごっそりと減り、経営危機にさえ陥ってしまう。したがって、営業の柱は、ほとんど店に出ている店長かママ。また、客が喜ぶ余興やショー、イベントなどで差別化を図る店も目立っている。
第20ラインビル7階で1月29日開店のスナック「サカ爺(Gee)の婆(Bar)」(TEL:092-282-8677)は、レギュラーの娘が1人。雇われだった頃から店の売上トップだったサカ爺店長が、常連のニーズに応えて出店する期待の新店だ。「いろんな人が出会って仲良くなれる店にしたい」というサカ爺店長は、店名に「出会いの場(ば)」という意味を込めた。同店には、不定期・短時間でも働ける店として、多くが流動的に出勤する。稼ぎが減ることで働く女性の中洲離れを懸念する小生にとっては、同店が『早上がりのセーフティーネット』となることを願って止まない。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポートしてきた男の遊びコンサルタント。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の歓楽街関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲(福岡市博多区)にほぼ毎日出没している。
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