全国平均を大きく上回る病床数や地域での病院間ネットワークなど、「医療のまち」としての可能性を秘めている飯塚市。市内の病院のなかでも、もっとも多い病床を有し医療設備が充実している飯塚病院は、2011年12月、市や九州工業大学とともに「医工学連携の協力推進に関する協定」を締結。「医療のまち」としての現状や医工学連携の今後について、飯塚病院副院長の鮎川勝彦氏に話を聞いた。(聞き手:大根田 康介)
<飯塚市の取り組みを日本全体に広めたい>
――医工学連携は医療関係ではある程度認知されているとは思いますが、そのほかではあまり周知が進んでいるとはいえません。「スイーツのまち」、「ITのまち」も含め、「医療のまち」として外への情報発信が必要と考えますが、その辺りはどのようにお考えですか。
鮎川 当院は、病院としての評価はそれなりだと自負していますが、モノづくりなどはこれからですし、地域住民のコンセンサスが必要だと考えます。ただ、飯塚市の各病院は総合病院から個人病院まで、一定の情報共有が必要です。地域のネットワークや病院間のネットワークを今後つくり上げていかなければなりません。
情報発信の1つといえるのは、日韓産業技術協力財団ならびに飯塚研究開発機構が日韓の医療・介護連携を目的に、今年度から3カ年の計画で「九韓医療・介護交流事業」を行なうことです。医療に関しては、この事業のIT化など日韓の情報交流によって、飯塚地域における最適な地域医療、医療・介護連携システムの構築を模索し、九韓交流を促進するものとして位置づけられています。
2013年2月には、飯塚市において「医療・介護の地域連携(日韓の比較)」というテーマでフォーラムを開催します。ここでは地域のネットワークづくりの話も出てくるでしょうし、パネルディスカッションも行ないますので、地域一丸となって問題意識の共有も図れるでしょう。このフォーラムによって、医工学連携が一歩前進することを期待しています。
アジアでもっとも高齢化が進んでいるのは日本ですが、その次は韓国です。そういった意味でも、日本からアジアに発信していかなければなりません。問題意識を共有することでアジアと連携しながら、我々は医療機器の開発をし、アジアに売り込めるチャンスでもあります。この飯塚市の取り組みをほかの自治体でも参考にしていただき、日本全体に広がっていってほしいですね。
――非常に可能性を感じますし、高齢化というある意味「弱み」を「強み」に変えるチャンスですね。これからの飯塚市の医工学連携に期待しています。ありがとうございました。
≪ (3) |
<プロフィール>
鮎川 勝彦(あゆかわ・かつひこ)
鹿児島県生まれ。1981年九州大学医学部卒業後、九州大学附属病院救急部入局。九州大学附属病院救急部・麻酔科・集中治療部に17年勤務。98年、(株)麻生飯塚病院救急部部長、集中治療室室長就任を経て、99年、同院救命救急センター所長、06年副院長に就任した。07年経営担当副院長、12年より医工連携担当副院長を兼務している。この間救急搬送患者情報伝達システムIT化を推し進めてきた。
※記事へのご意見はこちら