<うどんとアートで盛り上げる――香川県>
「うどん県。それだけじゃない香川県」をキャッチフレーズに、さぬきうどんに加え、アート、オリーヴの産地であることもアピールするのは香川県。13年には、今年開催される第2回瀬戸内国際芸術祭に合わせて、「アート県」を宣言するなどPR戦略に優れている。
92年からベネッセホールディングが直島に美術館、宿泊施設などをオープン。04年にベネッセアートサイト直島として、豊島、岡山県の犬島にも美術館群が作られ、自然と現代アート・建築がコラボするアートの島々として生まれ変わっている。瀬戸内海を船で巡りながら現代アートを鑑賞するスポットとして欧米など海外からも多くの観光客を集める。
豊島は、1975年ごろから産業廃棄物の不法投棄が問題となったが、住民の30年以上にも及ぶ戦いで、産廃の島外撤去を実現し、環境・自然と共生する島へと蘇った。小さな島々が、世界的に注目され、地域が再生した好例だ。
「うどん県」で香川県の知名度が上がったのは確か。だが、その話題性が集客効果につながったかというと疑問も残る。香川県東京事務所・産業振興部の担当者は「高松市にはこれまで見かけなかった欧米からのバックパッカーも増えている。ただ、現代アートに興味のある客層が、即、うどんを食べたい客層と重なるかというとそうではない。直島などにアートを見に来てくれた海外の観光客などにも香川県内でうどんを食べてほしい」と、2つの軸をどうリンクさせるのか。さらに知恵を絞る。
<地域の"総合力"を地道に上げる――鹿児島県>
アイドルグループAKB48の人気メンバー・柏木由紀さんを県の魅力をPRする「薩摩大使」に任命して、若年層をはじめ幅広い世代にアピールするのは鹿児島県だ。県全体のイメージアップを図るために、若い世代への発信力のある柏木さんを起用。手つかずの大自然や食、温泉の豊かさに触れられる「本物。鹿児島県」を売り出していく。
鹿児島県東京事務所観光物産課の担当者は、一歩一歩やっていくとして、次のように話す。「鹿児島は関西方面からだけでなく、関東方面からの観光客が一番多い。観光は、農業や工芸、食を含めて、地方の"総合力"だと考えています。首都圏では、かごしま遊楽館を核に、鹿児島のファンを増やしていくという考え方。鹿児島に今あるもの、地元では普通だと思っていたものが地元らしさ。その"本物。"を体感してもらいたい」。
「観光」という観点で見ると、首都圏から距離があるという時間的ハンデも抱えているが、幕末の薩摩藩の歴史、文化の遺産と、世界自然遺産に指定されている屋久島などの豊かな自然がある。これらを活用しながら、誘客し、地域の雇用などにもつなげるという、好循環を生むことができるかどうかが課題だ。
<"人"にお金が流れる仕組みづくり>
地域活性化に必要なのは、官民がうまく絡み合いながら地域にある農業、工芸、食などの良さ(=総合力)を高め、若い力を集めること。地域内にお金を呼び込む集客力を高めながら、地域の人々の自発性、主体性をうまく引き出すこと。外からの来やすさと、内側からも気軽に参加しやすい気安さを高めていく必要がある。
さらに、「その地域にしかないレア感」、「その地域に行けば、何かに出会えるという期待感」を発信できることが条件であり、地域内での雇用と、やりがいのある仕事を創出することも必要だ。キーポイントは、やはり"人"である。
民主党政権は「コンクリートから人へ」をなしえなかったが、安倍政権では「コンクリートも人も」になるだろう。つまりは、ハード面もソフト面もうまく作りつつ、短期的に「コンクリート」を再整備し、長期的に「人」を育てなくては、日本の未来は活性化しないということだ。アベノミクスには、短期的な観点からは「コンクリート」の再整備で効果が出そうな雰囲気があるが、長期的な効果は不透明だ。「大企業」や「大都市」も国の要だが、国全体の持続的な成長を促すためには、長期的な観点から地方と、地方を支える人材にお金を循環させる形を作ることが大切だろう。
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