<派手な動き・宣伝の資金の出所は?>
1月18日、医療法人樹啓会≪シティデンタルクリニック≫(院長・矢野匡、福岡市博多区)が自己破産の準備に入り、事業停止になった。店舗も閉まった状態にある。
治療通院していた友人は激怒する。「梅宮辰夫を使ってバンバン宣伝しまくっていたので信用したのが、誤りだった。インプラント7本を治療しているが、莫大な金を前金で払ってしまった。やけにわずらわしく前払いを催促するので気を許したのが悔やまれる。診療日の予約を入れるのに連絡が取れない。『おかしい』と懸念していたら『破産します』と封書が送り付けられてきた。ふざけるな!!これはまさに詐欺にあったのと同じだ」と怒り心頭。
この友人の場合は、1日に7本も抜歯されたという。タクシ―で帰宅する際に口元が鮮血で真っ赤になっていた様を目撃した運転手は、「お、お客さん!!大丈夫ですか」と悲鳴をあげたそうだ。別の歯科医師にコメントを求めたところ、普通のインプラント治療の場合には、患者の口内の状況を判断しつつ1本1本丁寧に抜いていくそうだ。また、抜いた歯の空洞に基盤となる骨が安定するまではインプラントの打ちこみはしないことが原則になっている。シティデンタルクリニックは、資金回収を優先した粗雑な治療をしていたのである。
この医療法人樹啓会の倒産ばかりでなく、歯科医の倒産が珍しくなくなった。
金融機関も歯科医の開業への融資は慎重だ。いや実際は敬遠するようになってかなりの時間が経過している。では、派手な宣伝をしている歯科クリニックは、どのように金を工面しているのか? 取材の過程で、歯科医師の間で語られる噂話を耳にした。≪派手な宣伝資金の出所は暴力団だろう?≫というのだ。
<事業行き詰まり借金呪縛から逃げられず>
福岡市歯科医師会に登録している歯科医師の数は1,500人内外。最近開業した若い歯科医師は会に登録しない。未登録者が500人内外。合わせて2,000人前後の数である。
最近の実例であるが、早良区一等地で5,000万円の資金を投入して開業した。6カ月で敢え無く倒産して、その歯科医師は東京に逃げたそうだ。逃げたというより借金のカタに東京に飛ばされ、働かされて返済を強いられているのだという。
この道30年のある歯科医師は、次のように断じる。「少なくとも我々の1割の200人は経済破綻者だ」。
世間知らずの歯科医師たちは、相手の素性も確かめもせずに安易に借入する。そして易々とヤクザ金融の毒蜘蛛の網にかかる。網にかかった歯科医達はあちこちに飛ばされて稼がされて大半を借金返済に充当される。タコ部屋に叩き込まれたようなものである。
歯科医師の行政登録の管轄は各県単位である。例えば佐賀市(管轄佐賀県)で失敗すれば日田市(大分県)に逃げて開業できる。ここでまたまた行き詰まれば福岡市(福岡県)でも開業可能である。資金のバックアップは心配ない。
警察の取り締まりが厳しい昨今、暴力団の方々も、しのぎを稼ぐのは大変な時代だ。最近、売春の摘発が目立つが、警察の狙いは資金封鎖であろう。彼らのあらゆる稼ぎに法の網がかかっていく。その中で歯科医医師経済破綻者管理ビジネスは堂々と王手を振ってできる数少ないケースである。経済破綻すれば歯科医師の免許が剥奪されるという法律でも施行すれば、このビジネスも前途多難になるが、当面その動きはない。
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