中小企業金融円滑化法が2013年３月31日に時限立法の最終期限を迎える――。そのなかで中小企業の経営支援を実施し、多くの企業再生を手がけてきたＣＲＣ企業再建・承継コンサルタント協同組合の代表理事・真部敏巳氏に、現状の課題と今後について語ってもらった。

＜大半は１～２年での回復は無理＞
　――まず、円滑化法が間もなく最終期限を迎えますが、金融機関や金融庁の現在の動きはどのようなかたちになっていますか。

　真部　今のところ、円滑化法に変わる政策もこれといって出ておりませんので、当面は出口戦略が最重要課題となります。それを踏まえてお話ししますが、金融機関は円滑化法の終了でリスケ（リスケジュール）をしなくてはならないという努力義務はなくなりますので、金融機関ごとにそれぞれ対応することになります。もちろん、それを機に債権を売却したり、全額返還請求などということはしないよう、金融庁は厳格に指導していきます。しかし、「実抜計画が１年以内に策定できる見込みがある場合」や「５年以内（最長10年以内）に経営再建が達成される実抜計画がある場合」は不良債権に該当しない、とも言っています。要は円滑化法が終わっても実抜計画ができている企業に対しては、最終期限を迎えても何ら変わらないというわけです。

　――では、そのなかで実際に実抜計画ができている中小企業はどのくらいでしょうか。

　真部　金融庁によると、金融機関（654社）における円滑化法の施行状況（中小企業者向け）は、2012年９月末で実行件数が343万7,155件、審査中の案件等を除けば実行件数は97.４％となっています。日本の企業の約20％弱が円滑化法を適用しているなかで、実抜計画通りにできている企業は我々の感覚からすればかなり少ないように思えます。

　――その基準はどう判断しているのですか。

　真部　おおまかに段階で言うと、（１）実抜計画がきちんと実行できている、（２）実抜計画ができているが実行は８割以上、（３）実抜計画ができているが実行できていない、（４）実抜計画自体ができていない、という基準になります。そうすると実行できているかいないか計画を立てた段階から少なくとも１年は経過を見ないといけません。そう考えると（１）、（２）は２割程度、（４）が２割程度、そして（３）が半分以上という統計の取り方になります。（３）は経過を見ていけばいいとして、問題は（４）ですね。リスケを繰り返したところで出口は見えません。

　――そうなるとＭ＆Ａや債務整理...という話になってきますね。

　真部　再生可能な要素である「経営力」「業界」「体力（財務力）」「ポテンシャル」がない企業になるとそうなりますね。ＤＥＳ（デット・エクイティ・スワップ）やＤＤＳ（デット・デット・スワップ）をするにしてもそうです。まあＤＥＳは金融機関が株式を保有するかたちになるので、コンプライアンス上厳しいですから、ＤＤＳが有効な手段だと言えます。ただ、ＤＤＳは損益計算書（Ｐ／Ｌ）でしっかり利益を出すことが条件ですから。キャッシュフローが回復するというメドがつかないと原則的には難しいですね。一方で金融庁は、財務面からの再生支援等としてＤＤＳ勧めます。仮にそこで失敗して二次破綻したら、責任を取るのは金融機関なので、彼らは慎重にならざるを得ないわけです。十数年前とはかなり変わっていますので、金融機関側もひとえに金融庁の指示に従うことが難しくなってきている感もあります。

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