家業を引き継いだ梅田兄弟が2人3脚で発展させてきた(有)梅田畜産。すべて偶然から生まれた福岡・飯塚を代表するブランド豚肉"乳豚(にゅうとん)"は、多くの消費者の舌を満たしている。乳酸菌配合の飼料に加え、添加剤には天然ミネラルを豊富に含んだ阿蘇の黄土、飲料水には磁気活性水を使用し、文字通り一味違う豚肉が誕生した。その背景にはどのような思いがあったのか、同社専務取締役の梅田秀美氏に話を聞いた。
<食品廃棄物は決してゴミではない>
――大変な時期を乗り越えて、今日があるわけですね。
梅田 細々と今日までやってきたわけですが、昔は私の給料も出ないくらいギリギリの経営でした。とはいえ、父の連帯保証人の問題で会社が金銭的に窮地だった頃、兄が何とか私を大学に通わせてくれたのだろうと感じています。家が本当に苦しかった頃、私はのほほんと大学生活を過ごしていたわけですが、今考えれば「あの苦しい状況で、よく仕送りや学費を出してくれていたな」と思います。
その気持ちを絶対に裏切ってはいけない、という考えがだんだん強くなるなかで、「一生懸命働いて、今度は私が兄たちの夢を叶えてあげたい」と思うようになりました。私も、「この豚舎をこの地区で一番大きな規模するぞ」という壮大な夢を抱いていたときもありましたが、何でも大きければ良いというものではないと、あとで気づかされることになります。
ようやくこの家業で飯が食えるようになって、次は家族や親を養っていけるようにならないといけない。そのために豚舎を建て替えるわけですが、それにはご近所の協力が不可欠でしたから説明会を開くなどして、また国、県、市の協力もあってボロボロの豚舎を建て替えることができました。
我々が従来から食品廃棄物を活かした畜産システムを考える仕事をしてきましたので、豚舎のつくり方も地域の資源を活用できるような豚舎にしたかったのです。最近の豚舎は、ボタン1つで乾燥したエサが各飼育場に届けられるような、人件費などのコストを極力抑えたものが主流です。しかし、そうした豚舎のつくり方は型にはまり、景気にも左右されやすいものだと考えております。これまで我々が苦労してきた経験を封じないような、そして工場や病院など各施設から出た食品廃棄物をうまく活かせるような豚舎にしようと決めていました。
私たちが病院や給食センターなどの施設へ食品廃棄物を回収しに行ったとき、「いつもこんなものを処理してくれてありがとう」というお客さまの喜ぶ声を聞くことができます。そうした声に耳を傾けながらやってきました。ただ、私も誇りを持ってこの仕事をしていますから、「ゴミ屋さんが来た」と言われることにだけは怒りを覚えます。そうではなく、きちんとエサとして活用しているわけですから、"食品廃棄物はゴミだ"という感覚を取り除いてほしくて、「そちらが出しているのはゴミではありませんよ」と伝えることにしています。
<店舗情報>
■豚肉工房うめちく
所在地:福岡県田川郡福智町金田1853-3
TEL:0947-48-3229
URL: http://umechiku.co.jp/
<COMPANY INFORMATION>
■(有)梅田畜産
代 表:梅田 幸司
設 立:2002年4月
資本金:300万円
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