<日銀は、「期待インフレ率」の話を隠す>
――ゼロ金利で金融緩和ジャブジャブやっているけどデフレ脱却できなかったというのはウソなんですね。
山本 日銀は「期待インフレ率」を変えるというのを隠すんだよ。なにを言うかというと、「銀行に金を出しても、銀行の貸し出しは増えないじゃないですか。銀行に貯まるばかりで、それが貸し出しにいくような成長力強化のような話がないとダメですよ」というロジックを言ってるんですよ。僕らは、その日銀のウソがよくわかっているから、いや貸し出しなんか増えなくていいんだと。期待インフレ率が上がるか上がらないかというのが最大のポイントなんだ。実際に、マネタリーベース増やすと、期待インフレ率上がるんですよ。期待インフレ率は、客観的に取れる指標は1つしかなくて、これは普通、長期国債の金利と物価連動国債の金利の差を見ると、それがわかるわけですね。それが唯一客観的にわかる指標で、そこを使うと、今見たような関係が出てくる。
マネタリーベースをあと40兆円増やすと、期待インフレ率が2%になる。日銀は、これを絶対に教えない。この期待インフレ率を使うのに対し、あーでもないこうでもないとウソっぱちを言って逃げている。
だから我々は、実際の貸し出しは増えなくていいんだ、金が銀行に貯まるだけでいいんだ、だけどこの期待インフレ率が上がるということは確実に起こるので、そうすると人が動き出す。将来物価が下がると思っているから誰も消費しないんだし、企業も投資しないんだけど、将来の物価が1年後に、10年間とか5年間平均して2%上がることが人々の間に出てくれば、じゃあ今買おうか、値段が上がる前にと、消費しだすし、企業も「来年は物価が上がるな」と投資しようと。デフレ脱却の最初はみんなキャッシュを持っているんだ、それを使う。最初は、「持っているキャッシュを使って消費をし投資をする」という行動が起こるから、それを使い切らないうちは、銀行の貸し出しなんか伸びないんですよ。使い切れて初めて、じゃあ銀行にお金を借りてまた使いましょうかという話になってきて、過去の歴史から見ると銀行の貸し出しまでいくのは2、3年後ですよ。それを日銀は無視して「貸し出しが増えないから効果ないんだ」って、新聞記者をすぐごまかして。
<政府に責任転嫁する日銀>
――「実需につなげないといけない」とよく言われますね。
山本 実需というのは、期待感が変われば出てくるんだ。その期待の話は日銀は一切しない。そして、「政府がサボっていると出来ませんよ」みたいな話に責任転嫁してくるわけです。デフレ脱却は絶対に金融政策だけでできるんですよ。
もし、金融政策だけでデフレ脱却ができないという議論が本当なら、何が起こるかというのを考えたらいいですよ。何が起こるかと言ったら、「日銀がどんどん市中にある国債を買いまくれ」です。日銀が国債を買いまくっても物価が上がらない、インフレにならないんだと言うんだろう。じゃあ、市中にある国債全部、日銀が買い占めればいいじゃないか。国債累積問題、一瞬で解決する。将来増税して返す必要なんかありません。日銀に全部売っちゃうんだから、政府日銀一体だから。あっという間に国債累積問題がなくなると言っているのと同じことなんですよ、金融政策でデフレが解消できないという議論は。そんなにそこまでどんどん金を出したら必ずインフレ状況が起こってくる。その話をしたら一発で終わり。絶対に、金融政策でデフレは解消できるんですよ。
――なるほど、山本先生の本領発揮ですね。
山本 そう、そう。だから、僕が言っているのは、今は期待感のところだけだけど、実際にマネタリーベースを160兆円まで持っていくかどうかで、ちゃんと持っていきさえすれば、2%になり、株は1万1,300円、1ドル98円になるよと。
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