中小企業金融円滑化法が2013年3月31日に時限立法の最終期限を迎える――。そのなかで中小企業の経営支援を実施し、多くの企業再生を手がけてきたCRC企業再建・承継コンサルタント協同組合の代表理事・真部敏巳氏に、現状の課題と今後について語ってもらった。
<企業再生に"経営力"が不可欠>
――さまざまな問題があるのですね。円滑化法が終了しても選別化にはまだまだ時間がかかりそうですね。
真部 経済成長のためには選別化を進めなければならないという認識は共通しているのですが、どこも己に火の粉が降りかかってくるのがわかっているんでしょうね。現在、中小企業再生支援協議会が暫定リスケスキームを活用しているのも、「実抜計画を作成できるレベルに到達できない企業」と「債務者区分を落としたくない金融機関」という現状からの対応だと思います。
――具体的には今後、どのような流れになっていくと予想されますか。
真部 日本はあきらかにオーバーバンクですので、金融機関が再編される流れができてくると思います。すでに東京や大阪ではそういった動きが出てきていますので、この流れは地方にも浸透していくでしょう。そうすれば、まずは企業の選別化が明確になります。リスケ(リスケジュール)の先にお金を滞留させるのではなく、生産的なところにお金を回さなければ経済が活性化する道理はありません。
――事業の持続可能性が見込まれない企業は淘汰されていくと。では今、中小企業に求められるものはやはり"経営力"ということですね。
真部 その通りです。どう強化を図るのかは一番の問題ですが、内部的には人の保管(人材確保や従業員のモチベーションを保つ)、外部的には提携ですね。単にM&Aするのではなく、たとえば販売ルートで提携するなり、生産部門で提携するなり、やり方はいろいろあると思います。今は外部との提携は必須だと言えます。でなければこの厳しい現状を乗り越えられないでしょう。うまく強化されれば、損益計算書(P/L)も伸びてくるはずです。
<専門家たちの連携と育成を重視>
――円滑化法を適用している中小企業は自分たちが今いる段階をきちんと認識することも大事になってきていますが、サポートする金融機関などの支援機関には今後、どういったことが必要になってくると思いますか。
真部 計画をつくるだけではなく、実行すること。これが必要ですし、そのことに気づいている金融機関も少なくありません。当然、金融機関のなかでも「この企業は助けてあげたい」という要望がありますが、彼ら自身のところから人を入れるのはコンプライアンス上、困難だというときに、我々のような専門家がいるのです。バランスシート(B/S)をどうカットしていくかではなく、P/Lをどうアップさせるか。ここが肝になってくるでしょう。
――以前福岡で行なわれた再生支援セミナーには、約160名が詰めかけていました。これについてはどうお考えですか。
真部 東京の商工会議所は支部ごとにたくさん、この内容のセミナーを開催しているので各会50名前後の集まりです。福岡で160名も来るということは、まだこのテーマでのセミナーが少ないためだと思いますが、経営全体を考えての再生スキームをつくれる人が少ないという事実もあります。弁護士は弁護士、税理士は税理士...などといった自分の専門分野はもちろん把握しているのですが、横軸を把握していない方々も多いと思います。財務面ではきっちりできるけど経営全般になるとうまくいかなかったり。そうした経験を積める土壌や教育機会がないということも問題です。それらを学ぶ土壌として、ターンアラウンドマネージャー(TAM)養成講座を福岡でもやりたいですね。専門家同士がチームを組んで連携するためにも、再生支援の考え方にぜひ触れていただきたいと思います。
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【CRC(企業再建・承継コンサルタント組合)】
本 部:東京都千代田区神田司町2-2-7 パークサイド1ビル6F
代 表:真部 敏巳
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URL:http://www.crc.gr.jp/
<プロフィール>
真部 敏巳(まなべ としみ)
(株)リクルート住宅情報・(株)リクルートコスモス(現:コスモスイニシア)流通営業部を経て、公認会計士事務所の不動産関係会社社長。1992年、(株)アセットパートナーズを設立後、01年にCRC企業再建・承継コンサルタント協同組合を設立し代表理事に就任。現場の第一線で企業再建・承継コンサルタントとして全国行脚。
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