2月22日の「竹島の日」がやってくる。今年こそは政府主催の「竹島の日」の式典を期待したが、政府主催の式典は見送られそうだ。非常に残念である。
<本籍移籍後の反響>
私は長年、竹島問題の解決に向け、民間人の立場で活動している。その一環として、2004年3月11日、韓国が半世紀以上にわたって不法占拠している島根県・竹島に本籍を移した。正確には当時、「島根県隠岐郡五箇村竹島官有無番地」であった。その後、同年10月の市町村合併によって五箇村は隠岐の島町に編入されている。
竹島に本籍を移したことを受けて、インターネットの配信やテレビのニュースで「濱口和久氏『竹島に本籍移す』」と大きく取り上げられた。翌日からは各新聞でも紹介され、韓国のマスコミでも大々的に報道された。
当時はホームページ上に自身の連絡先を公開していたので、北は北海道、南は沖縄から電話、FAX、お手紙、メールでの激励や賛同する意見が多数寄せられた。米国在住の日本人男性からの激励のメールもあった。
代表的な意見としては「言葉だけでなく、行動で示す姿に感動しました」「勇気ある行動を評価します」「主権に対して希薄な人や国家観のない人が多いが、濱口さんの行動にはしっかりとした信念を感じました」など。「自分も竹島に本籍を移したいので、移す方法を教えて欲しい」というものまであった。
それに対して、「右翼みたいなことはやめろ」「おまえは日本人として恥ずかしくないか」「おまえのような奴が日韓関係をおかしくする元凶だ」「相手(韓国)の気持ちを考えないのか」などの批判的な意見もあった。
韓国人からも何件か意見をもらった。当然、激励や賛同の意見などは1件もあるわけがなく、筆者に対する攻撃的な意見ばかりである。「おまえの家族に危険がおよんでも責任は持てないぞ」という脅迫まがいの過激な意見も数件あった。
<なぜ、私が竹島に本籍を移したのか?>
韓国が04年1月に独島(竹島の韓国名)をイメージした「独島切手」を発行したことに対して、麻生太郎総務相は「対抗して日本も『竹島切手』の発行を検討すべき」と発言していた。
そこで東京学芸大学・殿岡昭郎(とのおか・てるお)元助教授らが「竹島切手」発行の申請を同年2月に日本郵政公社に行なった。すると、「切手のデザインとしてふさわしくない」「外交上の問題を起こす可能性がある」という理由で、日本郵政公社は「竹島切手」発行を拒否したのである。
日本郵政公社を所管するのは総務省であり、そのトップの麻生総務相が「『竹島切手』の発行を検討する」と言っていたにもかかわらず、発行を拒否する理由について、その後は1度も説明はなされなかった。
唯一、閣僚のなかで川口順子外相だけが「竹島切手」発行に対して発言したが、「国際協調を掲げる万国郵便連合憲章の趣旨にのっとり韓国の独島切手発行に抗議した。日本が対抗して竹島切手を発行すれば抗議の根拠を失う」というもので、韓国に対する弱腰外交だけが一段と際立つ結果となった。日本政府は結局最後まで韓国に対して何ら対抗措置を取らずに終わったのである。
日本の政治家が国益を顧みない行動をすることは度々あったが、改めて「竹島切手」発行騒動にそれを垣間見た気がした。竹島は歴史的にも国際法的にも、まぎれもない日本領土である。日本政府が「竹島切手」発行を拒否する理由などはどこにもないはずだ。
後日、殿岡氏らが起こした「日本領土である『竹島切手』を日本郵政公社が発行を拒否したのは違法な行政処分」とした訴訟の判決で、東京地裁は訴えを却下した。
判決理由で鶴岡稔彦(つるおか・としひこ)裁判長は「日本郵政公社のオーダーメードサービスによる切手発行には権力的な要素はなく、発行しないことは行政処分に当たらない」として、訴え自体を不適法としたのである。
鶴岡裁判長は「切手発行には権力的な要素がなく」と言っているが、日本領土である「竹島切手」を発行させないこと自体が、特定の権力的圧力ではないのか。「竹島切手」の発行を認めないということは、日本政府自身が竹島は韓国領土であると認めていることと等しい行為である。ちなみに現在も「竹島切手」の発行は認められていない。
以上のような政府の不甲斐ない対応に憤りを感じ、島根から竹島問題を日本全国にアピールし、領土問題に一石を投じたいという思いで、竹島に本籍を移したのである。
まだまだ私の活動に終わりは見えない。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
※記事へのご意見はこちら