家業を引き継いだ梅田兄弟が2人3脚で発展させてきた(有)梅田畜産。すべて偶然から生まれた福岡・飯塚を代表するブランド豚肉"乳豚"は、多くの消費者の舌を満たしている。乳酸菌配合の飼料に加え、添加剤には天然ミネラルを豊富に含んだ阿蘇の黄土、飲料水には磁気活性水を使用し、文字通り一味違う豚肉が誕生した。その背景にはどのような思いがあったのか、同社専務取締役の梅田秀美氏に話を聞いた。
<口蹄疫で一変。苦境で生まれたブランド>
――新しい豚舎建設の背景には、そうした理念や思いが詰まっているわけですね。
梅田 どんな少ない廃棄物処理量でも、お客さまは喜んでくれます。しかし、近年主流となっているかたちの豚舎をつくることになれば、わざわざエサに残飯を使う必要もなくなり、こうしたお客さまとの関係が切れてしまう可能性も十分にありました。「本当にそれで良いのだろうか」と自問自答した結果、こうした関係性を崩すことなく、しかも循環型社会に貢献できるようなものにしようという結論に至ったのです。
"乳豚"という製品が生まれたのは、本当に偶然が重なった結果でした。以前は鹿児島のハム業者に当社の豚を卸しているだけでしたから、実は我々自身が「当社の豚がどんな味か」は知る由もなかったのです。ところが、2010年に発生した口蹄疫によって、すべてが一変しました。まず、鹿児島に豚の出荷がほとんどできなくなったのです。それで地元への出荷を見直さなければならないということで、福岡食肉市場へ卸すことになりました。
福岡食肉市場は、これまで取引のあったハム業者などとは違い、自分のところの肉をどうやって売り込むかということが求められました。そこで、まずは味を確認すべく、先方に意見をうかがいました。すると「本当においしい豚肉ですね。御社はどうやってこの豚を飼育されていらっしゃるのですか」と聞かれました。そこで、「小麦を主体に乳酸菌などを配合したエサを与えています」と説明すると「肉にサシが入っているから、ほかの豚肉とは違いますね。我々がブランドをつくりますから、どんどん販売を進めた方が良いですよ」と言われました。
ハム業者に卸しているうちは、そうしたことにまったく気づきませんでしたが、この一件で「やはり味にもこだわらないといけないんだな」と改めて感じました。そうして、乳酸菌が入った豚で"乳豚"というブランド名になったわけですが、その背景には豚舎が大きくなったことで皆さんに迷惑をかけてしまったのでは、という気持ちがあります。つまり、いろいろな方の協力を得て建てた豚舎が、実は臭いなどでむしろ周りに迷惑をかけているのではないか、ということです。
健康な豚を飼育することこそ、皆さんへの恩返しになるのではないか―そう思い、現在に至ります。乳酸菌は体に良いことが知られていますが、それがひいては自然環境にも良いものだったのです。こうした豚肉をつくりたいから、こうしたものを食べさせれば良い―というのはまったくわからない世界です。結果として、自然環境やこれまでのお客さまとの関係性という、遠まわしではありますが当社にとって大切な要因を第一に考えてきたからこそ、"乳豚"が誕生したのだと思います。直線的な思考をしていたら、この豚肉は生まれていなかったでしょう。
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<店舗情報>
■豚肉工房うめちく
所在地:福岡県田川郡福智町金田1853-3
TEL:0947-48-3229
URL: http://umechiku.co.jp/
<COMPANY INFORMATION>
■(有)梅田畜産
代 表:梅田 幸司
設 立:2002年4月
資本金:300万円
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