なぜ復興は遅々として、進まないのか。「1000年に一度、未曾有の震災...。被災者に寄り添うと国の政治家たちは言うが、非常時態勢になっていない。遅れている理由は、さまざまだが、1番の原因は"国の考え方"」と陸前高田市の戸羽太市長は力を込める。
市街地が津波で甚大な被害を受けた陸前高田には、被災後、生活に必要なスーパーマーケットがなかった。津波で流された量販店が、民間の農地を借りてプレハブで再開しようと計画したが、「補助金を出して整備した農地を転用したらダメだ」と国から規制がかかった。
手続きに長期間を要し、4カ月後にようやく規制緩和がかなった。「すぐにスーパーマーケットを建てたいというのが被災地の要求だったが、『そこが農地であれば、スーパーを建ててはいけない』というのが国の答え。通常時と同じような仕事をしている」。それが、日本の現実...。
<縦割りの弊害が緊急事態下で...>
「陸前高田は、ガソリンスタンドもすべて流され、被災直後には、ガソリンがなくて苦労した」。
捜索によって収容された遺体は、小中学校の体育館などに一時安置された。しかし、交通網が寸断されたうえ、ガソリンがないために、行方不明となった家族を遺体安置所に探しにいくことすらできなかったという。
当時の東祥三内閣府副大臣が陸前高田市を訪れ、ガソリンをドラム缶に入れて輸送してもらうことになり、危険な作業であるため自衛隊に輸送を手配した。
ようやく、ガソリンが到着する前日の夜、経産省の官僚から市長のもとに電話がかかってきた。「そのガソリンは、経産省が用意したものですから、自衛隊の方には、給油させないでください」と、言われたそうである。被災してまだ生きている人がいたかもしれない極限の状況下。緊急を要する国家の非常時に、この言葉である。国家公務員の試験を受けて通った優秀な官僚なのだろうが、何たる、柔軟性と想像力の欠如だろうか。
「そういう国のシステムの縦割りという現実がある。よくわからないルールが、実際に復興を遅らせている」。
国交省など柔軟に対応した省庁もあるにはあったが、国の組織的な構造の問題点が、復興を大幅に遅らせた。
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