病気で治るという「ハンドパワー」「マインドパワー」習得を名目とする高額セミナー受講料を集めた所得を隠し脱税した疑いで1月31日、気功療法のセミナー会社(株)アースハート(本社:福岡県篠栗町)の代表らが福岡地検に逮捕された。原則非課税となる宗教法人を隠れ蓑にして、セミナー料を宗教法人に寄付させる手口を使ったとみられる。
逮捕されたのは、社長の前田謙治容疑者、前社長の野中邦子容疑者、役員の古家みさを容疑者の3人。
アースハートをめぐっては、セミナーの内容には実体がないとして、高額な受講料の返還や慰謝料の支払いを求めた民事訴訟が約1年前から福岡地裁に相次いでいる。原告数は、合計47人にのぼっている。被害者は、これだけにとどまらず、福岡県など九州一円にとどまらず、愛知県にも及んでいる。受講料は70万円、12回の講義などを受ければハンドパワーを習得できると勧誘していた。
アースハートが医療関係者に浸透し、熱心な会員(あるいは"信者"というべきか)となっている医師の存在も浮かび上がっている。
「手かざし治療」が各地で社会問題になったのをご存知だろうか。「泰道」という宗教法人が佐賀県にあった(1997年解散)。被害者から民事訴訟を起こされ、相次いで敗訴。アースハートの前社長は、泰道の幹部だったとされている。
アースハートと宗教法人をつなぐ足跡が愛知県にあった。まずは、愛知県弁護士会のホームページには、昨年11月、次のような「お知らせ」が掲載された。
「宗教・宗教まがい被害110番の実施について」のタイトルで始まり、「『布教活動』を行っているにもかかわらず、会社として活動を行っている面もあり、状況に応じて宗教と会社を使いわけており、被害者が被害に遭っているのに気づかないことです」と注意を喚起している。
さらに、「平成初期に九州で多数の被害者を発生させたエセ宗教団体の幹部が、株式会社を設立し、東海地方で『布教活動』を行っております」「マインドパワーなどと称し、効果の不明な手かざしによって『病気を治す』『空の雲を消すことができる。』『ジュースの味を変えることができる。』と言って勧誘し、何十万円もの高額な受講料がとられるなどの被害が発生しております」とある。アースハートのことを指しているのは、この団体を知る者ならすぐピンと来る。
脱税のために送金されていたという宗教法人は「ひのもと」(大分県九重町)とみられるが、前田容疑者が「ひのもと」と深い関係を示す事実も、愛知県T市に残されている。
2011年ごろ、「ひのもと」がT市で特別支援学校を建設しようとした際に、前田容疑者が設立準備室長を務めていたのだ。地元住民の反対運動が起き、市議会で「住民に十分な説明を求める請願」が全会一致で採択されている。請願によると、前田容疑者は「ひのもと」の代表役員とされている。
アースハートの本当の顔は、気功療法のセミナー会社なのか。隠れ蓑にした宗教法人なのか。アースハートがセミナーを開く会場とされている「アースハートヒルズ」にある医療法人との関係は? この医療法人の代表は、アースハートの役員を務めたことのある人物でもある。
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