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アメリカに学ぶ日本の弱点(1)~シンクタンク
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2013年2月 1日 07:00

 アメリカは、懸念された「財政の崖」を乗り越え、ヨーロッパの苦境を横目に、不安材料はあるものの、景気は緩やかに浮上しそうだ。長く円高・デフレで低迷した日本とは違い、金融政策もきっちり。その決断のスピードには、やはり目を見張るものがある。大統領は確実に任期を全うし、政策を推し進める。アメリカ政治における政策立案力の強さの理由は何か。強い日本を取り戻すための課題とは。アメリカや、日本と同じ議院内閣制のイギリスと比較しながら日本の問題点、弱点を考える。東京大学法学部の久保文明教授に聞いた。

<アメリカの政策立案力>
kubo.jpg アメリカの政治の強さ、スピード、経済政策の手堅さを語る時、その理由の一つに政策立案過程での能力、質の高さがある。政策に関する情報が霞が関に集中している日本に対し、アメリカでは行政府だけでなく、立法府にも政策の専門家が数多く在籍している。

 日本は、長く自民党が与党で、野党の政策構想能力が磨かれてこなかった。共和党のブッシュ政権(2001年~09年)が8年、その後、09年に発足した民主党のオバマ政権が4年。二大政党の両党が偏りなく政権を担当。「日本では政権から離れた場合、霞が関から切り離され、野党の政策立案のレベルが落ちる。とくに野党の政策構想力が弱い。アメリカでは、共和党、民主党ともに政権を運営した経験者を豊富に持っており、与野党ともに政策構想能力の絶対的なレベルが高く、質量ともに充実している」と、久保教授は説明する。また、「役人が書いた法案に議員がハンコを押すだけというのは許されない。議員が、与野党ともに政策決定に参加する。委員長クラスになれば、みな高い政策能力を持っている。日本の場合、上に立つ政治家の政策理解が弱く、部下(官僚)の専門能力をうまく使いこなせていない」という。

<政策の質を高めるシンクタンク>
 政権を離れても政策立案の質が落ちない理由は、頭脳集団といえるシンクタンクによる政策提言が充実していることが大きい。政策形成過程において、重要な役割を果たしている。
 日本と比べて規模が大きく、専従の研究員を50~100人規模で抱えている。アメリカではイギリスのように政党が資金を出しているのではなく、自らが強い資金基盤を持ち、資金を調達。研究員、従業員の給料を支払っている。政党とは独立しているが、思想、価値観で共和党寄り、民主党寄りで色分けすることはできる。
 アメリカでは、政権交代が実現すると、大統領が行政府の局長以上のポストをすべて政治任用する制度になっているが、オバマ大統領が就任した際、民主党系のシンクタンクから多くの人材が政権入りし、高級官僚として勤めている。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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<プロフィール>
kubo_pr.jpg久保 文明 (くぼ ふみあき)
1956年生まれ。政治学者。東京大学法学部外業後、1993年より慶応義塾大学法学部教授を経て、2003年より東京大学大学院法学政治学研究科教授。アメリカ政治に詳しく、アメリカ学会副会長、東京財団上席研究員などを兼任する。著書に「現代アメリカ政治と公共利益―環境保護をめぐる政治過程」(東京大学出版会)、「アメリカ政治を支えるもの―政治的インフラストラクチャーの研究」(国際問題研究所)など。


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