<使い勝手のよくない復興交付金>
被災地の各自治体では2013年を、「目に見える形で復興が始まる一年」と、位置付けている。政府は、5年間で19兆円だった復興予算枠を6兆円上積みし、5年間で25兆円に増額。日本郵政株の売却収入などを財源に充てる。
ただ、被災地は広く、場所によって要望もさまざまで、金を増やせばいいという問題ではない。量よりも質。これまでに執行した予算でも、効率的に使っていればもう少し復興へと近づいているはずだ。
また、市町村や県が事業計画を作って申請する復興交付金(国交省などの40事業に対応)は、被災地にとっては使い勝手が悪い。戸羽市長は、「復興交付金にはメニューという項目があって、メニューに載っていない項目には使えない。陸前高田市は、体育館、博物館も津波の被害に遭った。博物館などの施設を作るためには、交付金は使えないことになっている。被災地が必要としているものに使えない。そこを変えないことには、復興のスピードは上がらない」と、お金の効果的な使い方もスピードアップに欠かせないことを示した。
<被災地側に立つべき復興庁>
安倍首相は、復興庁幹部を福島に常駐させ、現場で判断させるなど、変革のメッセージを出している。が、被災地の心情としては、東北の現況をよく知っている小野寺五典氏(防衛大臣、宮城県気仙沼市出身)、鈴木俊一氏(外務副大臣、岩手県下閉伊郡出身)ら被災地出身の議員にも、復興の担当となり、引き続き、東北でリーダーシップを発揮してほしかったというのが本音だろう。
戸羽市長は、「津波被害の状況をよく知っていらっしゃる小野寺議員、鈴木議員には復興の仕事を引き続きやってほしかったというのはあるが、根本復興相には、『縦割りではなく、横串(横の連携)も大事』という言葉をもらった。その言葉が本当なら、これまでよりもいい環境になる」と、安倍政権の復興政策への期待感をのぞかせた。
現場を知り、被災地の味方になる復興庁でなければ、その看板は看板倒れだろう。あり方を、迅速に変え、名実ともに復興のけん引役とならなければ、現在の「調整役」「ただの窓口」という被災地の印象はぬぐえない。ワンストップでの司令塔となれるのかどうか。
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