<安倍政権のやるべきこと>
震災復興に関しては、特に「縦割り行政」、「お役所的対応」、「我田引水的政治」などという言葉とおさらばしなければ、国が危ぶまれる事態となる。
震災発生後、2年が経とうとしている現在でさえ、地元から「復興の"ふ"の字も進んでいない」という言葉が出てくる。これまでの日本の緊急時対応、組織のあり方が間違っていたということだろう。
安倍首相は28日に行った所信表明で、震災復興について「これまでの行政の縦割りを排し、復興庁がワンストップで要望を吸い上げ、現場主義を貫きます」と述べている。これが、言葉どおりに進めば、復興のスピードは上がるはず。現場での実行力が問われることになる。
<真の「危機突破」できるか>
前例のあるリスクは管理できるが、それまでに例のない危機=クライシスには、マニュアルがない。東日本大震災は、まさに、先例のない危機だった。
そして、2年の月日で、これまでの国の危機対応のお粗末さが露呈した。やるべきことがやれていないのだ。「絆」というのはボランティアなどの民間だけに通用する話で、政・官はオールジャパンになりえていない。
霞が関の改変が容易でないことは明白だが、縦割りの組織のあり方自体を根本から見直すべき時機にある。この復興を成し遂げるため、被災地の憤りをひとつ一つ解消し、変えるべきところは早めにテコ入れし、改革しなくてはならない。そうでなければ、次に起こるかもしれない危機を乗り越える態勢は未完のままに終わってしまうだろう。
危機を未然に防ぎ、緊急事態が起こってしまった場合に最短距離で乗り越えるための組織の最適化、復旧までの人的な不足をすぐに補うための備え、震災の数々のケースを踏まえての通常時とは違う緊急事態時のみに通用する法律の再整備(緊急時にのみ地域的に発動する緊急時の特別法)など、危機管理体制の構築を復興と並行して進めなければ、次に来るかもしれない危機に、スピード感を持って対応することはできない。
陸前高田市の戸羽市長は、「復興は見えてこない。そのことを国は分かってほしい」と、被災者の声を代弁する。
2年近くを経ても思うように進まなかった復興。震災は、多くの教訓を残した。安倍政権は、真の意味での「危機突破」ができるだろうか。
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