中国政府さえも都合の悪いことはオープンにしたがらない。今回の観測データはアメリカ発のもので、そのデータを受けて、仕方なく中国政府が公表したのかもしれない。中国政府は応急措置として、1月末都心部のすべての工事を中止させた。さらに、有害物質の排出基準を超過した企業や車に罰金を科したという。中国の国営メディアは、深刻な大気汚染が起きた当日、ニュース番組のなかで、市民に向けて自家用車の使用を減らし、環境保護を心がけてほしいと呼びかけた。この報道に対し、インターネットユーザーからは「今更できるわけがない」「政府自体が信用できない」などと、今回の大気汚染に関する冷めた意見が多い。最も中国政府当局が発表したデータによると、北京市内の大気汚染の状況は12年連続で改善されているとのことで、ネットユーザーの声が出るのも無理はないようだ。
GDP世界第2位の超大国を支えている人口は、農村部でも急激に増えている。内モンゴル地区を中心とした内陸部は、政府の食料生産を増やす施策の影響もあり、砂漠化がますます進んできている。その結果、偏西風に乗った黄砂が日本だけでなく、太平洋を渡ってアメリカ西海岸にも届いているという。黄砂と史上最悪の有害物質が混ざった霧は、もはや地球を脅かすレベルにまで規模を増してきているのだ。
北京市内で大気汚染を含んだ霧が観測されなかった日は、たった5日しかなかったという。中国政府は昨年秋の党大会で、生態系と自然の美しさを重視する「美しい中国」というスローガンを出したが、それを引用する形で地元メディアは、「汚染された霧の中に美しい中国が隠れてしまった」と、虚しさともとれる批判を行なっている。
福岡市内で24日開かれた地球温暖化防止シンポジウムでは、「環境危機時計」なるものが紹介された。環境が悪化して地球が滅亡する時刻を12時に設定すると、2012年は9時23分となり、2011年よりも22分進んでしまったという。その悪化の大きな要因は、言うまでもなく中国にある。中国国民の自己中心的な意識の改革は、環境保全にとって急務なのかもしれない。
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