およそ民主主義において、選挙では候補者の当落のみでなく、投票内容から民意を汲み取り、その後の政治活動に反映させるべきである。2月3日に行なわれた福津市議会議員補欠選挙は、投票率が44.76%と、福間町と津屋崎町が合併して2005年1月24日に福津市が誕生してから行なわれた各種選挙のなかで最低の数値。しかも、投票総数2万697票の約11%にあたる2,264票が無効票、その多くが白票という結果だった。なぜ、「1割超が無効票」という異常事態に陥ったのだろうか――。
<問題先送りに白けムード>
今回の補選は、10年12月26日執行の同市議選において、公費で負担される選挙ポスターの作成費を水増し請求した問題で、村上修一前議長が11年5月に議員辞職、その分の空席をめぐって行なわれていた。村上氏は、「印刷業者が勝手にやった」として議長辞職を1度撤回。議員辞職願にも「水増しは意図して行なっていない」などと関与を否定している。
選挙ポスター作成費の水増し請求については、村上氏のほか、迫静吾市議と樋口幸雄市議、落選した小田征夫氏も関与していたとされ、現在、福津市議会は、同問題の対応について「検察の判断を待って検討する」としている。また、昨年の12月議会において議会改革調査特別委員会は、選挙の公費負担に関する条例で現行案を賛成多数で可決し、減額案を退けた。
同問題の発覚とその後の経緯を受けて、福津市議会に対する市民の不信感は高まっている。加えて、福津市議会の議員定数20は、福津市人口(約5.7万)の2倍に近い隣の宗像市(約9.6万)と同じ。また、旧2町の町議の報酬が、合併後に増額され、月額10万円アップの38万8,000円になった。ここ数年、国や地方自治体で議員定数や議員報酬の削減などを求める声が強まっているなか、とくに市議の不正問題が未だ解決を見ない福津市では、なおさら議会改革への有権者の関心は高いはずである。
しかしながら、有権者に配布される選挙公報を見る限り、今回の市議補選で立候補した3人のうち、具体的に議会改革に言及していたのは落選した新人の徳永武将氏1人のみ。選挙ポスター作成費水増し問題への対応を先送りにしている現職市議への配慮からか、同問題に触れていたのも徳永氏だけであった。その上、徳永氏に関しては「議員辞職した村上氏の後継」というウワサが飛び交っていた(取材に対して本人は否定)。結果、元県議秘書の吉村拓真氏が7,877票を獲得して初当選。残る2候補はそれぞれ5,000票以上を獲得するもおよばなかった。
有権者の間で〝白けムード〟が蔓延していた今回の市議補選。無効票のなかには「×」や「無」と記入して投じられた票も少なくはなかったという。また、福津市長選が同日執行されていなければ、投票率がもっと下がっていた可能性は高い。現職市議の残り任期約1年9カ月の間に、今回の投票結果から民意を汲み取り、反映させていかなければ、市政への不信感がさらに高まる可能性は高い。
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