2月3日に行なわれた福津市議選において、自民党支部の推薦を得て立候補し、初当選した元県議秘書の吉村拓真氏が、自身の後援会への参加を呼びかけるビラに小川洋福岡県知事と一緒に写った写真を掲載。小川洋事務所の所長は取材に対し、掲載の事実を把握していないことを認めた。つまり無断掲載となるのだが、同所長は吉村氏への抗議などの対応をしないという考えを示している。
小川知事の選挙への関わり方に疑問符がついた。昨年末の衆議院議員総選挙で、小川知事は、自身が映った写真を無断で選挙ビラに使われたとして、同選挙において福岡7区で立候補していた民主党の野田国義 前衆議院議員に対し、12月7日、選挙ビラの配布中止と回収を求める抗議を書面で実施。野田氏側から返事がないとして、同10日、再度書面で抗議を行なったとしている。
野田氏への抗議については、同選挙期間中の同7日、地元紙である西日本新聞が朝刊の社会面で「無断掲載」と報じ、また同12日、福岡県議会12月定例会で、自民党の桐明和久議員(八女市選出)が一般質問で取り上げた際、小川知事が説明した。
小川洋事務所の所長は、吉村氏へ抗議などの対応をしないことについて、「法定ビラ」ではないことを理由にした。選挙に関するルールを定めた公職選挙法は、選挙運動で配布される文書図画を制限しており、「法定ビラ」とは、同法で配布が許されたビラのこと。衆議院議員選挙の小選挙区では、2種類以内、7万枚までとされている。ちなみに、指定都市以外の市議選は、同法で通常はがき2,000枚までと制限され、ビラは禁止されている。
同所長は、「選挙において特定の候補者を推薦しているような印象を与える」として野田氏に抗議したとしているが、吉村氏のビラには「県議秘書から市政へ」という言葉が大きく踊るほか、「吉村たくま5つのチャレンジ」として、「選挙費用は全面公開します」「阿部県議秘書時代の経験を活かし市政を改革します」などといった文言が記載されており、有権者が選挙を意識せざるを得ない内容である。
選挙に対して中立の立場を取るのなら、法定ビラかどうかではなく、内容によって判断すべきはずである。知事側(所長)は、福津市議補選において、吉村氏を推薦したという事実はないとしているが、選挙関連ビラにおける〝野田氏以外の無断掲載〟を知ったうえで抗議しないことは、特定の候補者または政党に便宜を図ったことと同じではないだろうか。
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