人体の冷凍保存は、現時点では高額の費用がかかる。サービスを提供する会社によって値段の違いはあるものの、概ね全身の冷凍保存の場合には20万ドル、頭部だけの保存であれば8万ドルが相場となっている。これだけの資金を100%の再生保証がないまま、将来の復活の夢のために支払おうとする人はまだ限られている。
そこでアルコー財団では保険制度を設けてこの技術の普及に努めている。すなわち、健康医療保険と同じように生前から死後の遺体冷凍保存にともなう維持管理と、将来の再生を可能にする技術開発のために保険金の積立を行なうという制度である。月々の掛け金は10ドル程度と極めて手頃な保険料となっている。
当然、懐疑的な医療関係者もいるようだが、今の時点ではこれ以外に将来、蘇生できる可能性はない。そのため、利用者の数は徐々にではあるが、増え続けている。アルコー財団の場合、2012年末の時点で、113人がすでに冷凍保存サービスを受けており、保険に加入している会員も大幅に増加中という。
とはいえ、アルコー財団が進める冷凍保存のための保険制度に関しては、一部の消費者からは「新手の詐欺ではないか」といった疑いの声も出されている。しかし、実際にアルコー財団の経営理念や設備状況に関する資料を見る限り、極めて科学的なアメリカらしいビジネスと思わざるを得ない。
もちろん、法的な問題が問われる面もあるだろうが、あくまで遺体は検死官によって法的に死亡が確認された人間の肉体を超低温で保存することが契約の前提となっている。そのため、入院患者が余命いくばくもないと判断された段階で、アルコー財団やその他の冷凍保存企業のエージェントが病院でスタンバイするのが一般的である。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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