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コダマの核心

自立・持続組織シリーズ(6)~リクルート組織こそが【自立・持続組織の見本】(後)
コダマの核心
2013年2月16日 07:00
(新しい情報ビジネスの開拓者、江副浩正氏の死を悼む)

<就職情報をカネに変えた卓抜なアイデア>
 62年に刊行された『企業への招待』がリクルート発展の最初の推進力になった。後の就職情報誌『リクルートブック』だ。掲載企業の広告費で制作費のすべてをまかない、学生には無料で企業案内や就職情報を配布するというビジネスである。
 就職という情報を商品化しておカネに変えた卓抜なアイデアが、同社の急成長をもたらした。それにしても、情報掲載料をもらいながら、その情報を売るというアイデアを、62年の時点で思いついた江副氏の発想の斬新さには、舌を巻かざるをえない。
 『リクルートブック』で大当たりを取った江副氏は、転職情報誌『とらばーゆ』や住宅情報誌『週刊住宅情報』など、時代を先取りした情報誌を次々と発行した。それまで新聞の独壇場であった専門広告を1冊にまとめて売るという、誰もが考えつかなかった情報誌がほとんどだった。

 リクルートの社内が、スポーツ同好会的な雰囲気に支配されていたことはよく知られている。朝早くから営業のヨミ会をし、営業のノルマが達成されると、天井のクス玉が割れ、部署の全員で万歳三唱して喜び合う、という一種、異常ともいえる雰囲気がリクルートの大躍進の原動力になったことは間違いない。
 江副氏は異業種に進出。ホテル、スキー場やマンションなどの不動産事業、さらに金融事業へと事業を広げていった。江副氏が就職情報誌、マンション事業に次ぐ第3の柱として構想していたのが回線リテール事業だった。超大型のスーパー・コンピューター(スパコン)を据えつけて、NTTの電話回線を代理販売する事業である。
 しかし、通信事業は陽の目を見ることはなかった。スパコンからパソコンへと時代が移り、江副氏がリクルート事件で表舞台から退場したからだ。江副氏が経営者として、パソコン時代、それに続くインターネット時代に、どんな卓抜なビジネスモデルをつくりあげただろうか、と思うと惜しまれてならない。

<リクルート出身の起業家たち>
 江副氏の経営者としての最大の功績は、次世代を担う起業家を多数輩出させたことだろう。リクルート出身者は起業家として一大勢力を形成している。有名なのは、一時はネットベンチャーの雄であった有線放送、USENグループ会長の宇野康秀氏(50)。宇野氏がリクルート出身のメンバーらと一緒に独立して、立ち上げた人材紹介ビジネス、インテリジェンス社長の鎌田和彦氏(47)もリクルート出身。
 学生をIT企業に紹介するレイズアイ社長の舩川治郎氏(45)、経営コンサルティングのリンクアンドモチベーション社長の小笹芳央氏(51)、マンション分譲のゴールドクレスト社長の安川秀俊氏(51)はリクルート出身だ。
 ネットベンチャーも多い。ネット広告のセプティーニ・ホールディングス会長の七村守氏(57)、インターネットを活用したし市場調査のマクロミルは会長兼社長の杉本哲哉氏(45)をはじめ幹部はリクルート出身。
 昨年10月、「女性最年少上場」と話題になったネットマーケティング、トレンダーズ社長の経沢香保子氏(39)はリクルート時代に1週間で500枚の名刺を集めたという逸話の持ち主。リクルート出身の起業家から、江副浩正氏を上回る実業家が育つことを期待したい。

【児玉 直】

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