特定の候補者を推薦しているイメージを嫌い、昨年末の衆議院議員総選挙に立候補していた民主党・野田国義氏に抗議した小川洋福岡県知事。抗議の理由は、野田氏が選挙中に配ったビラに、小川知事と一緒に写った写真を掲載したことによるもの。しかし、今年２月３日に行なわれた福津市議補選の選挙関連ビラに、野田氏と同様に事前連絡なく、小川知事と一緒に写った写真を掲載した自民系の候補には抗議を含めて何ら対応をしないという。選挙に対して、県知事としての立場から強調する「中立」に、疑問を抱かざるを得ない状況となった。

　取材のなかで小川洋事務所の所長は、野田氏の件で「為書は野田氏以外にも送っている」と、特定の候補者を推薦していないことを強調した。「為書」とは、選挙の立候補者へ送られる「必勝」などと書かれたポスターサイズの紙のこと。多くの選挙事務所では、この「為書」が所狭しと貼り出された光景を頻繁に見かける。所長は、特定の政党・政治団体に属していない小川知事の立場を説明しようとしたのだが、ここで新たなる疑問が生まれる。

　そもそも小川知事の「為書」は特定の候補者に送られているものだからだ。昨年末の衆院選で、自民、民主などの政党に属していなかった候補者から、「小川知事の『為書』は送られていない」という複数の証言が得られた。つまり、同選挙において小川知事は、〝推薦する候補者を特定していた〟ことになる。

　さらに今回の福津市議補選で、勝手に知事の写真が掲載されたビラは、選挙に向けて後援会への参加を呼びかけるものであり、福岡県知事の存在が選挙におけるイメージアップ作戦に使われたことは否めない。ある政党に関わる人間なら見逃されるのであれば、不公平極まりない。もし、自身の保身のためであれば、県知事の立場を私物化していることになる。

　ここまでの経緯から、「為書」を特定されてもらっていた野田氏が、小川知事から受けた抗議について「中立」を根拠とする理屈は破綻した。また、取材のなかで、小川知事の写真の使用に関する明確なルールなどがないことも明らかとなった。野田氏への抗議を行なったからには、今後、福岡県下の各自治体で行なわれる選挙において、知事の写真の使用に関する規定が必要となるのではないだろうか。特定の人物を貶めることが目的でなければの話であるが・・・。

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