人体冷凍は保存中に、突発的な事故や災害によって命を失う場合もある。そのため保険加入者は必ず登録している会社の連絡先を身に着けることが求められている。事故現場や災害現場から速やかに冷凍保存会社に連絡が入る仕組みが機能している。時には、ヘリコプターによる緊急輸送も欠かせない。
万が一、速やかな連絡が取られず、遺体の冷凍保存が時間的に間に合わなかった場合には、それまでの掛け金はすべて遺族に返金されるというのが契約の原則である。かつてアメリカ発のがん保険が日本でも爆発的にヒットした。現在でも、日本で売られているがん保険の大半はアメリカ製である。今後は、この冷凍保存という新保険も日本を始め世界各地で普及する可能性は否定できないだろう。
アメリカのアンチエイジング学会のメンバーでもあるグロスマン医学博士は「この冷凍保存が実用化し普及する可能性は50/50だ」と述べている。確かに蘇るか蘇らないか、可能性は2つに1つ。保険を買わなければ、宝くじと同じで、当たる可能性はゼロ。しかし保険を買い、死後自らの遺体を冷凍保存しておけば、いつの時代かはわからないが、将来、蘇生させてもらえる可能性が生まれる。
そうした未来にかける人たちが、今後は確実に増えてくるだろう。現在アメリカでは、5社の冷凍保存専門サービス会社が数千人の契約者の遺体を静かな環境の下で冷凍保存している。将来の医学の進歩に期待し、再び彼らが息を吹き返す時を得られるように守り続けている。
最近は、冷凍保存の予約申し込みも増加傾向にあるようだ。とくに、医学やテクノロジーの分野に精通している人々の間で需要が高まっているとみられる。彼らに共通しているのは、「十分な資金と技術さえあれば、いかなる問題でも克服できる」というベンチャー的な発想の持ち主という点。要は、「死後の復活すら実現できないわけはない」という考えの賛同者は結構多いようだ。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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