18日、福岡市中央区の電気ビル共生館にて、九州経済連合会、福岡商工会議所などの主催による講演会「国際リニアコライダー(ILC)とは何か?~脊振に小さい宇宙が誕生する?!」が行われた。セミナーは二部構成で、第一部「国際リニアコライダーと宇宙」を高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所の藤本順平氏が、第二部「国際リニアコライダーは地域をどう変えるか」を九州大学大学院の高田仁准教授が担当した。世界最大級の加速器を佐賀県~福岡県に誘致するための理解と応援を求める活動の一環である。
加速器とは、電子などの粒子にエネルギーを与えて加速、衝突させる装置のことである。スイスにあるCERNが現在最大の加速器だが、本計画ではそれを超える施設が予定されている。脊振山の地下の花崗岩層にトンネルを掘り、30㎞の直線(リニア)衝突加速器(コライダー)を設置する。脊振山の山脈を伊万里市の南側から糸島市あたりまでの地下を予定として提案しているのだ。現在最長の加速器CERNは、直径9㎞の円形をしており、円周は27㎞もあるのだが、形状の特性上、どうしても減速してしまうのだという。今回企画されているものは直線で30kmもの長さがあるため、充分な加速と十分なエネルギーを与えることができるとされている。それによって粒子を加速させ、エネルギーを加えて衝突、消滅させることができれば、人類が見たことのない粒子まで観測することができ、また、宇宙の始まりであるビッグバンを再現できる可能性を秘めている。これは国際宇宙ステーション、国際熱核融合実験炉と並ぶ21世紀の3大プロジェクトのひとつである。
現在、脊振山と東北岩手の北上山地のいずれかを日本が推す候補地とすべく、地質的な適合性と研究者の生活の質の両面から調査が進められている。もし、背振山が候補になれば、名誉はもちろん、実質的な面で大きな利がもたらされることになるとされている。
福岡県、佐賀県、九大、佐賀大、九州経済連合会などでまとめられたサイエンスフロンティア九州構想によると、外国人の滞在人口がおよそ3,000人増加し、経済波及効果が建設時で計1兆1,000億円(うち九州内3,400億円。建設期間8年間の累計で)、運用時は年間630億円~670億円(うち九州内460億円~490億円)見込まれている。さらに、研究者とのふれあいによる地域の科学水準の向上なども期待できると言う。2~3年のうちに建設を確定させて、決定後10年程度建設期間が必要となるため最短で2025年くらいの稼働ができるという。
国内候補地として、九州の優位性をしっかりとアピールし、科学の進歩を北部九州が支えることができたら、どれだけ光栄なことだろうか。現実的な問題は多々発生するだろうし、競争はより白熱するだろうが、ぜひとも九州力を世界にアピールしてほしい。
▼関連サイト
・国際リニアコライダー計画
・ILCアジア-九州推進会議
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