<反自衛隊の市民活動>
毎日新聞電子版(2月9日付)に掲載された「陸自大津駐屯地『戦闘服通勤やめて』 地元住民反発、市長に協力要請」という記事を読むと、いまだにこんな馬鹿げたことを主張する市民がいることに驚かされる。
少し長くなるが記事の内容はこうだ。
陸上自衛隊大津駐屯地の隊員が今年から迷彩服で通勤を始めたことに対して、地元住民らが「戦争の象徴の服で日常生活に不安を感じる」と反発している。住民有志約20人は「自衛隊の戦闘服通勤はやめての会」(高田敬子代表)を結成、8日までに「戦闘服通勤の中止」を求めるよう越直美市長に文書で要請した。
同駐屯地によると、迷彩服での通勤は災害派遣に迅速に対応する狙い。今までは制服着用で通勤していたが、着替えに時間がかかるとし、1月から約350人が徒歩や自転車、バイクなどで迷彩服通勤しているという。
一方、地元学区の九条の会や新日本婦人の会を中心とする「やめての会」側は、「異様だ」「緊急性が求められる消防隊員も常に消防服を着ていない」と反発。
やめての会の高田直樹さん(62)は「夜は交通事故の危険性も高まる。住民との合意がないまま強行するのはおかしい」と憤る。同駐屯地の上原敏彦広報室長は「災害はいつなんどき起こるか分からない。全国の駐屯地でやっていることで、一部の人が反対しているだけ」としている。
大津市と同じような話は昨年6月、東京でもあった。小銃を携帯した迷彩服姿の陸上自衛隊員が災害出動を想定して、訓練生17人と安全管理の隊員24人が板橋区の荒川河川敷から練馬区の練馬駐屯地までの約6.8キロの距離を行進した。
その際、沿道では、市民グループが武器を持った行進に反対するシュプレヒコールを上げる一幕があった。大津市の「自衛隊の戦闘服通勤はやめての会」同様に、東京で反対する人たちは、自衛隊がお嫌いなのか。
<「自衛隊信頼」71%>
ところが、読売新聞(2月15日付)に掲載された、読売新聞社と米ギャラップ社の日米共同世論調査の結果は、「信頼している国内の組織や公共機関」という質問に対して、「自衛隊」が71%(前回75%)となり、東日本大震災での活動が高く評価されてトップになった。これは前回調査に続いて最多。なお、「自衛隊」以下、「病院」(68%)、「新聞」(57%)、「裁判所」(56%)などが続いた。
毎日新聞と読売新聞のどちらの記事も国民の声(認識)として示している。しかし、記事をよく読めばわかる通り、毎日新聞が扱った市民らはあくまでも一部。それをまるで全体であるかのように誤解を与えかねない内容となっている。大マスコミの悪習が表れたケースとも言える。読売新聞の世論調査で示された「自衛隊信頼71%」こそが、普通の国民の認識であることは誰の目にも明らかだろう。
<国民防災力の強化のために>
「反自衛隊」の〝市民の声〟自体にも疑問符がつく――。東日本大震災やその他の災害で迷彩服を着た自衛官が活躍する姿は、多くの国民から信頼され、期待されているはずだ。
中越沖地震発生の際、「反自衛隊」を主張していた一部の柏崎市民は、自衛隊の給水、給食、入浴サービスなどに並んだ。
自分自身のみならず、家族の生命をも脅かされる災害発生時において、大津市や板橋区で「反自衛隊」を主張している市民は、一部の柏崎市民と同様の行動をとらないと言えるだろうか。
首都直下型地震や南海トラフの巨大地震は必ず起きると言われている。そのときに自衛隊は欠かすことのできない存在となる。自衛隊は、災害発生時、「反自衛隊」の市民も助けなくてはならない。自衛隊員が誇りを持って迷彩服を着て活動できる環境こそが、日本の災害対応力の強化に繋がるのである。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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