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大さんのシニア・リポート~第9回 行政マンが熱い自治体もあるという話2(後)
行政
2013年2月25日 07:00

om_2.jpg 先日、UR(都市再生機構)のN氏に会った。名刺には「団地マネージャー」とある。N氏の話を聞いて驚いた。わたしの町の某地区にある大規模なUR(賃貸)団地の集会所を一部改築して「ふれあいサロン」を立ち上げ、「誰でも仲間と好きなときに気軽に集える常時開設の場、いつでも自由に参加できる交流拠点」にしようという計画なのである。
 驚いた理由は、これが、団地の自治会や関連するNPO法人、ボランティア団体からの要望ではなく、逆にURが計画して団地自治会などに提案するという、これまでとは真逆の発想がN氏の口から発せられたからだ。

 千葉県松戸市常盤平団地(UR賃貸)にある「いきいきサロン」開設までの艱難辛苦を思うと隔世の感がある。
 昭和35(1960)年竣工の常盤平団地には、自治会が「家賃値上げ反対」「建て替え反対」の闘争を主導して戦い、勝ち得たという歴史がある。当然、UR(旧公団)は敵として位置づけられてきた。
 築53年になる団地は、建て替えられることなく幾度かの改修を経て現在に至っている。そのため、家賃が周辺のマンションや建て替えられたUR団地と比べて、格段に安い。その後、自治会は「孤独死ゼロ作戦」を展開して全国に名を馳せた。「常盤平団地は住民(とくに高齢者)が安心して住める団地」として有名になり、周辺のUR団地の空き室率をよそに、入居順番待ちという状態なのである。
 UR側は喜んだ。空き室ゼロなのだから家賃収入に問題はない。建て替えなかったことが、逆にUR側にメリットをもたらしたのだ。もちろん「孤独死ゼロ作戦」を指導した自治会の役割も大きく評価された。
om_1.jpg URに変化が生まれた。自治会が団地内にある空き店舗を利用して、高齢者の居場所「いきいきサロン」の開設を申し込んだところ、二つ返事でOKが出たのである。それも貸店舗だったころの賃貸料の半額と格安。自治会と地区(団地)社協からの援助で賃貸料を賄った。2008年4月にオープンした。利用料の100円で、コーヒーや昆布茶などが飲み放題。弁当も持ち込み自由とした。コンセプトは「好きなときにきても開いている居場所」である。だから1年のうち、閉めるのは正月の3日間のみ。ほぼ年中無休である。
 当初は閑散とした日が続いたものの、最近では1日平均30人。1年で1万人超。年収100万円を超す。光熱費や材料費、それにフロアレディの給料を差し引いても黒字になる。7年目に入って順調な運営を続けている。

 URは常盤平自治会のノウハウを学んだ。
 N氏のような団地マネージャーを新設して、UR(賃貸)団地内に誰でもが集える「ふれあいサロン」を設け、住民の要望に応えようとしたのだ。そうすることで、空き室解消につながることに気付いたのだ。
最後に、わたくしごとで恐縮なのだが、3月8日に『騙されたがる人たち』(講談社)を出版する。次号で内容を紹介したい。悪徳・詐欺商法にひっかかる高齢者が後を絶たないのは、被害者そのものにも問題があると思うからである。

(つづく)
【大山 眞人】

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<プロフィール>
ooyamasi_p.jpg大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。


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