＜プレッシャーをモチベーションの原動力に＞
　木下社長は、高校時代から東京で暮らし、その後JR西日本に入社した。「もともと私は、大手企業に就職するつもりはありませんでした。昔から『会社の歯車になりたくない』という思いがありましたから」と語る木下社長が同社に入社したきっかけは、開発事業部で『まちづくり』に携わりたかったからだ。
　「就職活動のときは電鉄系も受けており、そちらも非常に魅力的ではありましたが、JRの方が規模も大きかったですし、多少なりとも故郷の福岡に関わりたいと考えていました。そのなかで、JR西日本は福岡まで新幹線が通っており、また福岡に支社があるという点で面白いかなと思い、就職を決めました」（木下社長）。

　しかし、就職時は阪神・淡路大震災と同じ1995年。JR西日本は会社自体のノウハウが民営化直後で少なく、また震災復旧のため鉄道事業に注力していたという背景があり、新入社員を開発事業にまわす余力はなかった。
　「私は、新幹線の駅の改札やみどりの窓口、運転手まで経験しました。最後の職場は、JR西日本がJR東海と一緒にやっている東京司令所でした。出世の路線としては悪くなかったのかもしれませんが、私が小さな頃から、家でずっと父が建築関係の仕事の話をしており、そこで『まちづくり』に興味が湧いていました。ちょうど30歳になって、『やめるなら今でないと無理だな』と思い、東京で働きたいという夢もある程度叶えられたかなと思って故郷の福岡に帰ってきました」と木下社長は振り返る。

　建設業界では若手となる、39歳で代表取締役社長に就任。2017年には100周年を迎える同社において、新しい経営者となった木下社長の胸中はどうなのか。
　「経営者として100周年を迎えるにあたり、私なりにプレッシャーもありますし、私の父も『俺がこれだけできたんだから、お前はもっとできるだろう』とサラッと言ってきます。『父をやっと超えた』と思えるのが、５年後か10年後かはわかりませんが、それが間違いなく自分のモチベーションの原動力になっています。父は高校時代から私を東京に行かせてくれて『投資』をしていたわけですから、それに対する恩返しはしなければならないと考えています」（木下社長）。

＜時代が変わっても変わらぬ理念＞
　現在の同社の強みは、個人の土地活用を提案する自社ブランド「WITH"a"シリーズ」をはじめとした集合住宅施工。また、これまで医療施設や商業施設での豊富な実績もある。近年では、コンビニのほか、待機児童増加の時代的背景から保育園建設の受注も増えているという。

　「時代によって何を手がけていくかは変えていかなければならないと思いますが、今まで建てていただいたお客さまにいかに満足してもらえるかが大事だと思います。弊社ホームページでも『感謝と感動』をキーワードの1つとしています。下請業者さんや設計事務所さんなど、関係者の方すべてにも感謝の気持ちを常に持っています。もちろん、人間のやることなのでトラブルが生じることもあるかもしれませんが、結果として弊社に依頼して良かったという言葉をいただくお客さまとは、本当に長続きします。最近、下請業者さんに『有澤さんの現場技術者はほかのゼネコンさんと比べても、技術力が非常に高いですね』という評価をいただくこともあります。そうした言葉をいかにいただける会社にするか、ここが一番大事だと思います」（木下社長）。

　一般個人施主を中心とした民間の受注基盤を維持している同社。不動産不況で一時は売上高が大きく落ち込んだが、現在は堅調な増収基調にある。自社ブランドの営業提案力を活かし、100周年に向けて一層の成長を期待したい。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■有澤建設（株）
代　表：木下　英資
所在地：福岡市博多区博多駅南4-4-12
設　立：1967年9月
資本金：9,000万円
ＴＥＬ：092-433-1811
ＵＲＬ：http://www.arisawa.jp/

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