一般家庭をはじめ、食品製造工場、スーパー、外食施設、学校、病院、介護施設など、あらゆる場所から排出される「食品廃棄物」は、人間の日常生活とは切っても切り離せない。とくに人口が集中する都市部では膨大な量となり、その処分に要するコストは、自治体のみならず、企業、個人にとっても大きな問題となっている。それを解決する画期的な製品が、SINKPIA・JAPAN(株)(神奈川県横浜市、松岡清次社長)が開発した"消滅型"生ごみ処理機『シンクピア』だ。
<従来の機器が抱える問題>
なぜ、今また消滅型の生ごみ処理が注目されているのか。1983年ころから生ごみの微生物分解と分解産物の利用に関する研究に携わり、大阪府立大学教授などを歴任してきたIGAバイオリサーチ㈱代表取締役の坂井拓夫氏が、2012年に発表した「微生物を担持させた担体を用いる新規生ゴミ処理法」(『日本醸造協会誌』第107巻第10号760~768頁)という興味深い論稿がある。以下、要約してみよう。
過去、生ごみ処理には、機械にオガクズや木材チップなど天然の吸水性素材と生ごみを混合し撹拌しつつ加熱乾燥させる「減量型」の機器があった。しかし、坂井氏によれば、この方法は処理のエネルギーコストの観点から「エコ社会向きとは言い難かった」という。そこで、「減量速度は減量型に比較して遅いが、微生物の作用で分解処理し、処理に要するエネルギーが減量型よりも少なく生ごみの減量率が大きい」という「消滅型」に着目したという。
しかし従来の機器では、(1)食品廃棄物の原料が持つ微生物以外に周辺環境に由来する微生物の集殖による分解が、その周辺環境から孤立した容器のため効果が期待できない、(2)とくに脂質を多く含む動物質の生ごみは処理速度が遅く、最終的には脂肪酸の影響で分解が進まなくなる、といった問題点を抱えていたという。
つまり、安定した生ごみ処理のためには、刻々と変化する塩濃度、pH値、品温、水分の条件変化に耐えうる安定した微生物と、そのための担持体(吸着や触媒活性を示し、ほかの物質を固定する土台となる物質)・調整材の存在が必須だと、坂井氏は指摘する。今回紹介する『シンクピア』は、その両方を兼ね備えることに成功した。
あらゆる生ごみに対応する「シンクザイム」は、自然界から採取したバイオ菌を培養し、最適な種類をブレンドした微生物。高度なバイオ技術により分解時の悪臭を抑えて生ごみを水と炭酸ガスに分解処理する。そして、そのシンクザイムとの相性を考慮して開発された微生物ハウスが「バイオスター」だ。多孔質構造になっており、バイオ菌が高密度に棲息し活動することを可能にした。生ごみとの接触面積を高め処理能力を最大限発揮させる工夫が施されている。
<COMPANY INFORMATION>
■(株)シー・アール・シー
シンクビア事業部
所在地:福岡市東区松島3-29-18
TEL:092-623-2130
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