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さかえ屋・中野氏に第三者破産、録音記録が示す西日本シティへの疑念(2)
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2013年2月26日 07:00

<譲渡の過程でなされた不可解な説明の数々>
 さかえ屋の場合、粉飾の事実が出てきた経緯とその後の経過に釈然としない点が多い。通例の決算報告会では、取引銀行13行すべてから何の異論も出なかった11年5月期決算。これが、突然のデューデリによって粉飾決算と評価されたのが翌12年3月のこと。しかもNCBがデューデリを求めたきっかけは、さかえ屋からの追加融資の要請ではなく、金融円滑化法施行下での借換要請であった。従来から滞りなく返済していた企業に対し、円滑化法の利用を飛び越えてデューデリを課したケースは聞いたことがない。同法の精神に照らして疑問が残るとともに、あえてそのような条件を課した点に別の思惑を疑われてもやむを得まい。

 詳細についてはすでに弊誌1787号にて報じているが、粉飾決算の事実を突きつけられた中野氏は、NCBの対応に疑問を覚えながらも、代表辞任と株式無償譲渡に同意することになる。経営責任を取ったのだ。同じく副社長であった夫人、その他の親族も譲渡に応じ、結果としてNCB側は、同社株式のすべてを取得することに成功した。ただ、無償譲渡の経過を個別に見てみると、適切さに欠く手法も見られる。たとえば、中野氏の長女・由香理氏のケースである。

 昨年4月、NCBの担当者は由香理氏に対して、さかえ屋が実質12億円の債務超過状態、事実上の破綻状態にあることを告げ、「法律上、一番最初に権利がなくなるのが株主。権利が優先されるのが金融債務です」と説明している。また、「仕入れ先を一番保護しなくちゃならない」、「銀行にも50億円の半分を債権放棄してもらうため、株主にはまったく取り分がなくなってしまう」として、株式が無価値であることを強調。そのうえで、役員ではない由香理氏に経営責任はないとしつつも、「株主としての責任は取っていただかなければなりません」と求めている。「株主は誰を社長に選んだかについて責任があり」、その責任の取り方は、「株主の権利を放棄すること」だというのだ。また、「子は親の責任を取らなければならない」と説明するくだりも見られた。

<誤解を誘う説明と「遺言破り」への後悔>
sakaeya_nakano2.jpg このような説明であっても、いきなり東京から呼び戻され、混乱のなかで即日譲渡を求められた由香理氏に対しては十分なものであった。しかし、株式会社というシステムにおける株主の責任は、会社の破綻時に株式が無価値化する不利益を受けるにとどまり、それ以上に何かを提供しなければならない義務まで含むものではない。それは実質的に無価値化した株券であっても変わりない。また、子は親の責任を取るべきとの要求も、株主(子である由香理氏)に経営責任(=親である中野元社長の責任)を求めるものとして筋違いな要求と言える。仮に、親子という情実関係に基づいて株券を差し出せという意味であったとすれば、もはやそれは一昔前の商工ローンの説得手法に近い。改めてその真意を質したいところであるが、いずれにしろ、由香理氏は株式を手放さなければならない何らの法的根拠もなかったことになる。

 不十分な説明であっても、由香理氏が自由な判断によって無償譲渡に応じたのだとすれば致し方ない。ただ、そこに誤解や騙し(詐欺・錯誤)が入ってくれば、事情は一変する。実は、中野家には、過去の因縁に基づく1つのタブーがあったという。過去に発覚した経営上の問題を契機に、創業者の故・中野辰弥氏が、「U氏(※)だけは、二度と会社に入れてはならない」(※中野氏の叔父。かつて同社代表を務め、現在ではTなどの菓子会社を営む。)との遺言を残していたのだ。この遺言に従い、由香理氏も次の経営陣に関して質問。NCB担当者から、「U氏は関係ない」との回答を得たことで、最終的に無償譲渡に踏み切った経緯がある。しかし、蓋を開けてみれば、社長に就任したのはU氏の会社の副会長を務めるM氏であった。しかも、中野氏が去って半年も経たぬうちに、さかえ屋はチョコ菓子の製造ラインを止め、U氏の会社のチョコ菓子を販売するようになっている。これでは由香理氏が「騙された」と肩を落とすのも無理はない。NCBの誤解を誘う説明が浮き彫りとなるとともに、株式譲渡の有効性にも疑問符が付く。

(つづく)
【田口 芳州】

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▼関連リンク
・粉飾決算の代償は全株無償譲渡!(株)さかえ屋・元代表取締役社長 中野利美氏インタビュー(1)
・「さかえ屋決算粉飾」は、社会面で"事件扱い"するほどの記事か?


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