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「癒し型の大統領」に迫る難局の国家経営
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2013年2月26日 16:26

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の就任式が、25日行なわれた。朴大統領は、1960~70年代に韓国を工業立国に押し上げた朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の長女。韓国初の女性大統領となる。朴大統領は、「教育と科学こそ、未来を決める最も重要な両輪」との考えだ。アイディアと創意工夫を発揮できる「創造経済」を目指している。しかし、初の首相指名でつまづいたのを始め、政権の先行きには不安感がともなう。

<「癒し」を求められる初の女性大統領>
k.jpg 韓国ギャラップが1月末に実施した調査では、朴大統領の支持率は52%にとどまった。5年前の発足を控えていた李明博(イ・ミョンバク)政権のときの支持率より、15ポイントほど低い。政権発足を祝う「ご祝儀効果」を考えれば、朴政権の支持率は決して高くない。
 ありていに言えば、朴大統領は「癒しの大統領」である。そして、「癒しの大統領」であることを期待されている。李明博大統領は「経済大統領」として辣腕をふるった。しかし、逆に「国民間の格差」が問題になり、初の女性大統領は「癒し」を要求されるめぐり合わせになった。
 25日の就任式の参加者は、当初の予定から1万人増えて7万人にもなった。李大統領の就任式の出席者に比べて、2万人も多い。特別招待者は2,000人から3,000人に増える。これも「癒し型大統領」である証拠だ。独立運動の指導者である故金九(キム・グ)氏の孫や、李承晩(イ・スンマン)初代大統領を退陣に追い込んだ4・19革命、島民が軍や武装勢力に虐殺された済州4・3事件の関係者らが出席する。「国民大統合、社会的弱者への配慮、祖国守護など朴大統領が目指す価値に合った人物を選んだ」と説明される。
 日本からは麻生太郎副総理兼財務相が出席するほか、福田康夫元首相や森喜朗元首相らが出席。過去2回、現職の日本首相が列席したことを想起するなら、日本との関係は弱体化したというしかない。

<政局の混迷に拍車が>
 朴氏は14日、「我々は先進国を追う追撃型モデルで発展を成し遂げてきたが、これからは独自の先導型モデルを開発し、新たな跳躍をしなければならない」と述べた。しかし、言うは易く、行なうは難し。次期政権にはこれといった成長戦略がない、との指摘も韓国内から出始めている。
 韓国経済はこの5年間、"ウォン安"を満喫した。米ドルに対しては通貨危機当時を除いて最も安く、日本円に対しては過去最安値水準だった。李大統領が輸出を陣頭指揮したが、経済全般の成績は当初の公約を大きく下回った。李明博政権5年間の平均成長率は2.9%だ。輸出は「ウォン安」の影響で好調だったが、家計負債問題などもあって内需が足かせとなった。
 昨年の成長率2%は、第2次オイルショック当時の1980年(-1.9%)、通貨危機当時の98年(-5.7%)、グローバル金融危機当時の09年(0.3%)を除いて、韓国経済が経験したことがない低成長だ。しかし、大統領選挙期間という特殊性のためか、大々的な景気振興策は出てこなかった。
 2月8日の中央日報は、次のように指摘した。「経済が順調に成長すれば、朴政権の福祉公約財源確保も意外と簡単に解決する。しかし高成長の約束を守ることができず、新政権発足が目の前に迫っているのに、成長論理は出てこない」と手厳しい。
 同紙によると、経済部処のある次官級は「今後どのように、どれほど成長するという話は、誰もしていない」と嘆いた。ある証券会社の幹部は「低成長が長引き、経済主導者が自信を失っているようだ。こういうものが危機の兆候だ」と述べている。
 朴氏は、新政権の首相候補に、鄭烘原(チョン・ホンウォン)元大韓法律救助公団理事長(68)を新たに指名した。最初に首相に指名した政権引き継ぎ委員会の金容俊(キム・ヨンジュン)委員長は、息子2人の兵役逃れ疑惑などで辞退に追い込まれた。朴氏は再び法曹人を首相候補に指名し、次期大統領の統治哲学を再確認させた。
 これに対して野党側は、首相候補者への聴聞会で「厳しい検証」を予告している。これを乗り越えられず苦しい局面に陥れば、新政府は事実上、発足が遅れる。さらに、北朝鮮が核実験を強行したことで、政局の混迷に拍車がかかりそうだ。

<新政権発足には冷淡な視線も>
 朴氏は50日間の政権引き継ぎ作業を通じ、リーダーシップの一部を示した。「低姿勢の引き継ぎ委員会」を掲げ、公約や国政課題を点検するなど新政府の発足に向け、順調に準備を進めてきた。ただ、肯定的な評価がある一方、不十分な検証による人事失敗とコミュニケーション不足の指摘も出ている。
 韓国の新政権発足に対する米国の視線も、予想以上に冷淡である。米議会調査局(CRS)は北朝鮮政策や韓米原子力協定の改定、防衛費の分担問題などをめぐり、韓米間に不協和音が生じる可能性があると指摘した。
 朴氏は、対話と協力を積み重ねて、南北の関係改善を図る「朝鮮半島信頼プロセス」を掲げてきた。しかし、北朝鮮が核実験に踏み切ったことで、対北政策の見直しを迫られることになった。政局がらみのドタバタのなかで、国際社会と協力し、北朝鮮の核危機にうまく対処できるか、注目される。


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