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濱口和久「本気の安保論」

「竹島の日」に不誠実だった日本の政治
濱口和久「本気の安保論」
2013年2月27日 14:38
拓殖大学客員教授 濱口 和久

 島根県が竹島の領土権確立を目指して平成17(2005)年に条例で定めた「竹島の日」の記念式典が2月22日、島根県松江市内で開催された。今年で8回目となる同式典には、島尻安伊子内閣府政務官が政府代表として初めて出席、与野党国会議員も今までで最多の20人が出席した。私も2年ぶりに出席したが、正直言って、マンネリ化、大会のための大会のような式典という感想を持った。

<「竹島の日」条例に冷たかった日本政府の対応>
 「竹島の日」条例が島根県議会で可決された平成17年3月当時、日本政府は「竹島の日」条例に対して、冷たいコメントを連発した。小泉純一郎首相は「竹島問題については双方の立場がありますから」と韓国の肩を持つような発言までしている。町村信孝外相も「この時期(日韓友情年2005)に取り立てて、条例案を制定する必要があるのか」と発言する有り様だった。

 外務省首脳も「実効的にも意味のないことを県民感情だけで決めることはいかがなものか。議決までしなくてもいいのではないか」と、批判した。細田博之官房長官は記者会見で「基本的には島根県の問題。日本政府としては静観する」を繰り返した。また「島根県や同県議会から国による『竹島の日』制定の要請が相当強く何度かあった」と明らかにした上で「いろいろ検討した結果、断った」と、韓国に配慮した経緯を示したのである。

 細田氏は竹島を選挙区に含む島根1区選出の国会議員でありながら、島根の人たちの竹島に対する想いを受け止めていたのだろうか。細田氏の態度は「冷静な対応」と言うよりも「冷静な無視」を決め込んだのと等しかった。

 同じ年の3月25日に開幕した愛知万博の「韓国館」に、竹島を韓国領とするパネルが展示されていた。細田氏は「万博への出展は各国が独自に行なうもので、内容はその国の判断。竹島問題については適切な形で日本の立場を主張していく」と述べただけで、結局、韓国に対してパネルの撤去を求めなかった。

 さらに細田氏は沖縄・北方担当相として北方領土を視察した際、「北方領土の理想的な統治の形態は日露による共同統治が望ましい」という妄言を吐いて、日露双方の関係者から猛抗議を受けたこともある。

<票にならなかった竹島問題>
 竹島問題については細田氏だけが不誠実な対応をしていたわけではない。ほとんどの島根県選出国会議員が長年にわたって不誠実な対応をしてきた。島根県は自民党王国と言われ、竹下登、桜内義雄、青木幹雄氏などの大物国会議員を輩出してきた。にもかかわらず、彼らは日本政府への働きかけを表面的には行なっても、本気で働きかけをすることはなかったのである。

 島根県選出国会議員は、いかにして公共事業予算を地元に誘導するかが国会議員としての評価につながるとされ、島根県は県民1人当たりの公共事業予算が全国1位を長年続けてきた。島根県選出国会議員にとって、竹島問題という国家の主権に関わる問題よりも、公共事業予算のような「利益還元」のほうが優先順位として高かったのだろう。
島根県は毎年、日本政府に対して、竹島問題の解決を最重点要望項目の一番としている。いまもそれは変わっていない。

 ちなみに今年の式典では、島根県は以下の6項目を日本政府に要望している。

(1) 国際司法裁判所における解決を含め、領土権の早期確立に向けた外交交渉の新たな展開を図ること

(2) 新設された「内閣官房 領土・主権対策企画調整室」のもと、国民世論の啓発や国際社会への情報発信などを積極的に展開すること

(3) 竹島問題や国境離島に関する啓発施設を隠岐の島町に設置すること

(4) 「竹島の日」を閣議決定すること

(5) 学校教育において竹島問題を積極的に取り扱われるよう取り組みを強化すること

(6) 国境に位置する離島については、領土保全という特別な役割を考慮し、一般の離島振興とは別に、特別の支援措置を講ずること

<安倍政権は竹島問題を前進させよ>
 ドイツの法学者イェリングは「権利のための闘争」のなかで「隣国によって1平方メートルの領土を奪われながら放置する国は、その他の領土も奪われ、ついには領土をすべて失い、国家として存立することをやめてしまうであろう」と述べている。安倍政権が取り組まなければならない課題は多数あるが、安倍首相には、その言葉を肝に銘じて、竹島問題に取り組んでもらいたい。

<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ


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